虐待死事件の裁判員裁判 求刑を大幅に超える懲役15年判決
2010年に大阪府寝屋川市で、1歳8か月の娘が虐待死した事件。傷害致死の罪に問われた両親に、1審の裁判員裁判の判決では、求刑(懲役10年)を大幅に超える懲役15年が言い渡された。
裁判員を含む裁判体は、「起訴事実を含む長期の虐待の悪質性や、責任を他人になすりつけるような両親の態度の問題性を、検察官は十分に評価したとはいえず、本件のような重大な虐待に対しては、いままで以上に厳罰を科すことが社会情勢などに適合すると考えられる」と指摘。2審も1審判決を支持した。
“従来の量刑傾向を前提とすべきではない事情が具体的・説得的に示されるべき” とした最高裁判決

しかし最高裁第一小法廷は、1審・2審判決を破棄し、父親に懲役10年、母親に懲役8年を言い渡した。
最高裁は、悪質性などをめぐる1審の判断は間違っていないとしつつも、「裁判員裁判といえども、他の裁判との公平性が保持された適正なものでなければならないのは言うまでもなく、これまでの大まかな量刑傾向を裁判体の共通認識とした上で評議を深めていくことが求められる」とした。
そのうえで「これまでの傾向を変容させる意図をもって量刑を下すことも、裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではないが、そうした量刑判断が公平性の観点からも是認できるものであるためには、従来の量刑傾向を前提とすべきではない事情が具体的・説得的に示されるべき」と結論づけた。