福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える『老舗物語』。今回は震災という大きな困難を乗り越え、日本一に輝いたご当地グルメの味を守り続ける製麺所です。どん底から這い上がり、いまでは新たに開発した商品が人気を集めています。

特徴的な極太麺に、具材は豚肉ともやしだけというシンプルさですがその麺と具材をまとめる濃厚なソースが、なんとも食欲をそそる「なみえ焼そば」。浪江町では70年ほど前から食べられているご当地グルメです。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「浪江町は一次産業が盛んな場所で、麺を太くすることで食べ応えと腹持ちが良くなりますので、労働者向けの食事として開発されまして。」

「なみえ焼そば」がご当地グルメとして確立したきっかけが2013年に開催されたB級グルメの祭典「B―1グランプリ」で日本一に輝いたことでした。

道の駅でもお土産人気ナンバーワン、不動の人気を誇るまでになりました。

そのお土産などの「なみえ焼そば」を製造しているのが現在、相馬市に工場がある「めんの旭屋」。昭和28年創業、70年以上続く老舗です。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「“太っちょ焼そば”というブランドで焼そばを販売し始めました。その後、浪江町の極太麺で町おこしをしようということで“なみえ焼そば”というブランドが立ち上がりまして。」

もともとは浪江町で「なみえ焼そば」を製造していましたが、そこは今では事務所があるだけとなっています。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「震災の地震で製麺の機械が全て倒れてしまった。工場の裏に石造りの蔵があったんですけど、そこに小麦粉とか材料を保管してたんですけど、そこも倒壊してしまった。再開には当分時間がかかるかなと」

さらに原発事故により浪江町の全町民が避難し、当時のスタッフも散り散りになってしまいました。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「浪江町で再開したいという思いはずっとあったんですけど」

少しでも早く自分達の手で製造した「なみえ焼そば」を届けたい…という思いの中、浪江町で培った技術を活かせる話が舞い込んできたのです。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「相馬市で学校給食のソフト麺を提供していた業者が辞めてしまうと。ソフト麺は子どもたちにとっても人気のある献立の一つだと思うんですけど、双葉郡内で給食のソフト麺を提供していたので、相馬市で製造していただけませんかという依頼があり、相馬市で工場を再開した。」

震災から4年後の2015年、学校給食が縁で相馬市に工場を建設し、麺の製造を再開することができました。「なみえ焼そば」を製造する喜びを感じながらの作業。こだわりもたくさんあります。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「小麦粉は、福島県産のきぬあづまという小麦を一部配合して、地産地消に取り組んでいる。もっちりとしてるけどソフトな食感になるようになみえ焼そば専用のオリジナル小麦粉を使っています。」

生地にしたものを30分以上熟成させ、よりツルッとした食感に!

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「なみえ焼そばの麺は3倍太いということで、茹で時間も3倍かかると。通常の焼そばより1時間にできる数が少ないので、大量生産ができない茹で時間が長いというところが大変なところではあります。」

そんな中でも、なみえ焼そばの新商品を発売しました。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「“二郎系なみえ焼そば”という新商品を発売しました。なみえ焼そばは40代、50代、60代の方に購入されているというのがデータでわかりまして、20代・30代の若い方になみえ焼そばを知っていただくきっかけを作りたいというところで。」

全国的にもブームとなっている、太麺、脂、野菜、ニンニクもりもりの二郎系ラーメンをインスパイアした「二郎系なみえ焼そば」

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「二郎系の要素である脂とニンニクという部分を焼そばのタレに表現しまして、二郎系のラーメンももやしをたっぷり入れて食べるというスタイルが、なみえ焼そばと二郎系ラーメンの要素が合うのでは思いもありつつ。」

なみえ焼そばと二郎系なみえ焼そば。材料としてはニンニクを自分でトッピングする以外はほとんど調理工程はかわりません。ウスターソースを使うなみえ焼そばに対し、二郎系なみえ焼そばは…。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「しょうゆベースにニンニクと背脂を大量に入れたソースになります。」

ソースとしょうゆの違いは、見た目の色で全然違うのがわかります。

お好みでトッピングしたニンニクをよく絡ませながら、ニンニク、背脂に負けない極太麺のなみえ焼そばだからこその新たな味わいを感じることができます。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「わりかし評判が良くて、8月には関東エリアのドンキホーテで発売、びっくりしました。」

新たな挑戦が、しっかりと形となって評価されています。

--田河朋裕さん(めんの旭屋 専務取締役)「私たちは商売だけではなくて、なみえ焼そばを買っていただいて浪江町を知っていただくというところを大切に活動してきましたので、浪江町に来てもらうような流れを作っていきたいと思っています」

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年7月10日放送回より)