幾多の開発計画に翻弄された「宝の島」
巨大基地へと姿を変えていく馬毛島。これまで幾多の開発計画に翻弄されてきた。

戦後の食糧難だった1950年代。国策の開拓団が入り、最盛期の1959年には528人が暮らしていた。トビウオ漁や酪農が盛んで、「宝の島」と呼ばれた。
しかし、農業の不振や子どもの進学などで島を離れる人が増え、1980年には無人島となった。
その後、レジャー施設、石油備蓄基地、使用済み核燃料の貯蔵施設を誘致する案まで出たが、いずれも立ち消えとなった。

鳩山由紀夫 氏(2009年7月)
「最低でも県外の移設」
民主党の鳩山政権が打ち出した、沖縄・アメリカ軍普天間基地の県外移設。候補地にあがったのが、鹿児島県の徳之島だった。しかし…

徳之島の反対集会に参加する男性(2010年4月)
「命をかけて闘うからね。許さない、絶対に。この島には一歩も踏み入れさせない」
激しい反対運動が巻き起こり、徳之島への移設は実現せず、急浮上したのが馬毛島だった。
そして、2019年。安倍内閣が、島の大部分を所有していた民間企業から160億円で買収。アメリカ軍も訓練できる自衛隊基地建設に踏み切った。
決定したことが地元に知らされたのは、アメリカ政府に伝えられた後だった。

西之表市 八板俊輔 市長
「納得がいかない。いつのまにか決まっていたみたいな」
「自分たちの土地に入れない」憤る漁師
2025年5月、基地建設に反対する漁師らが馬毛島へ向かった。島の東側の海は、地元の漁協が国の補償金22億円を受け入れ、漁業権を一部放棄している。

漁師 濱田純男さん
「軍事基地をつくる時は、(漁師全員の)了解をもらってやるのが本当でしょ」
馬毛島で40年以上漁を続けてきた濱田純男さん。 国を相手に基地建設の差し止めを求める訴訟を起こしている。
記者
「馬毛島の漁港に到着しました。このあたりはかつての風景をまだ残している場所です。中には漁具倉庫なども残っています」

反対派の漁師らが権利を持つ「入会地」を残し、島の99%以上を国が買収している。入会地に行くには、国有地を通らなければならない。

しかし、防衛省の職員が立ちはだかる。

漁師 濱田純男さん
「私らと(基地工事について)一度も話していない。なんにも話をしないでこんなやり方を進めている。みんなお金に釣りあげられて」
防衛省側は、頑として立ち入りを認めなかった。