■「戦争にもマナーがある。これはギャングを送り込むようなものだ」

カディロフツィが、ウクライナの侵攻に加わることを日本の制服組のトップにいた河野克俊氏はどう思うか聞いた。

河野克俊 前統合幕僚長
「今回の侵攻は、ロシアの安全保障を確保するっていうのが大名目ですよね。でも、このカディロフツィは、暗殺などダーティーなことをやる集団。(中略)戦争にも、最低限守らなきゃいけないマナーがあるはず。それがもう何か知らんけどギャングを送り込むような形にしてるっていうのは、もう異常だと思います」

これによってウクライナ人の怒りは一層増すだろうと河野氏は結んだ。
さらに朝日新聞の峯村氏はこう言う。

朝日新聞社 峯村健司 編集委員
「プーチンの焦りだと思う。カディロフツィ投入は最後の手段。斬首作戦にしても、ウクライナのゼレンスキー政権には、ロシア寄りのスパイが入っていて簡単にできるだろうと思っていた。ところがイギリスやアメリカの軍事顧問や特殊部隊が守っていることで、それができないことへの焦りだと思う」

さらに峯村氏は、この“チェチェン”がキーワードだという。


■「チェチェンの成功体験がプーチン氏の原動力」

朝日新聞社 峯村健司 編集委員
「ロシアに長く勤務していたアメリカ政府の幹部が言っていた。やはりチェチェンの成功体験がプーチン氏のいちばんの原動力になっていると。チェチェン紛争を制圧したことで権力を掌握したプーチン氏は、その成功体験があるから、戦争を勝たなければいけない。今回の侵攻も次の24年の大統領選を圧勝したいがために仕掛けた。だから負けるわけにはいかない・・」

チェチェン紛争は1994~96年と1999~2009年の2回にわたって行われた。99年からの戦いはプーチン氏が大統領になって間髪おかずに始めた戦争だ。この時、ロシアはチェチェンの街を徹底的に破壊。首都・グロズヌイは、廃墟と瓦礫だけの死の街と化した。しかし、現在のグロズヌイの街は、近代的インフラが整備され、高層ビルが建ち並び、ヨーロッパ最大ともいわれるモスクまである美しい都市に変わっている。空爆などで完全に破壊し、その後の傀儡政権に資本を投入することで、現代的な街の繁栄を築ける。プーチン氏の成功体験の象徴ともいえる現実が、ここにあるのだというのだ。
さらにプーチン氏はチェチェン制圧によってロシア国内で支持を集め、その後今に至る強大な権力を掌握していった・・・ウクライナ侵攻でも同じことがあるのだろうか?

防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「チェチェンの時と同じ成功が今回のウクライナでも起こるかというと大きく疑問が残る。(中略)これだけ広範囲に破壊しておいて、この後チェチェンみたいに復興するからといってロシア国内で支持を得るというわけにはいかない。ウクライナ全土でこれだけの攻撃をした“やり過ぎ感”っていうのは、むしろ国内で今、反発が始まって、反プーチン的な動きも高まっている。やっぱりやり過ぎによる逆効果だと思います」
(BS-TBS『報道1930』 3月17日放送より)