■中学生17人に1人が“ヤングケアラー”の現実 少年も“ヤングケアラー”だったのか?


ヤングケアラーとは、家族の介護、幼いきょうだいの世話、家事など、あらゆる”ケア”を担う18歳未満の子どもを指す。全国にどれだけのヤングケアラーがいるのか?その実態は明らかになっていないが、去年4月、国はヤングケアラーに関する初めての調査結果を公表した。

調査は厚生労働省と文部科学省が行い、全国の公立中学校1000校と全日制の高校350校の2年生およそ1万3000人からインターネットで回答を得たものだ。

その結果、「世話をしている家族がいる」と答えたのは、

▽中学2年生で5.7%
▽高校2年生で4.1%だった。


つまり、「中学2年生の17人に1人」「高校2年生の24人に1人」がヤングケアラーとみられることがわかったのだ。

もしも、全国の生徒数に今回の割合と同じだけヤングケアラーがいたとしたら、中学2年生と高校2年生だけでも、およそ10万人ものヤングケアラーがいることになる。

いちがいに、ヤングケアラーと言っても、その内容はさまざまだ。

今回の調査では、世話を必要としている家族は「きょうだい」が最も多かったが、「父母」や「祖父母」などもそれに続く。

父母や祖父母だと食事・掃除・洗濯などの家事がケアの内容として多いが、きょうだいだと保育園の送迎などもある。

ケアの“重さ”も、もちろん人それぞれだが、調査では「ほぼ毎日」ケアをするという人が、およそ4割に上り、1日に「7時間以上」を世話の時間に費やす子どもが、1割以上いた。

一方で、「自分自身がヤングケアラーだと自覚している」子どもは、全体のわずか2%。また、「世話に関する相談をしたことがない」と答えた子どもが6割を超えている。「自覚なく、誰にも相談せずに、」ヤングケアラーとして暮らし続けている子どもたちが、多くいる可能性がある。


■“ヤングケアラー”に社会はどう手をさしのべられるのか?


1月24日、ヤングケアラーの支援にもあたっているNPO「カタリバ」が“ヤングケアラー経験者”を招いてウェブセミナーを開いた。(※今回の事件を受けて開催されたものではありません)

小学校高学年の時から、精神疾患がある母親のケアにあたってきた大学4年生の女性は、当時、自分がヤングケアラーだということを“自覚しづらかった”と語る。

元ヤングケアラーの大学生
「小・中学校の時はあまり自分が不幸だとか、ケアしているみたいな感じは全然なくて」

この女性の場合は、高校生になって高校の先生に悩みを打ち明けることが出来たという。支援団体の職員も、「自覚のないヤングケアラー」に対する介入の難しさを感じていた。

カタリバ職員
「明らかに見ていて支援の対象なのだけど、『対象じゃない』と答える子どもが結構いて、そこに対して『あなた対象だよ』と無理にでも連れてくるのか、それとも、もう少しケアに関する話を引き出していくようなコミュニケーションをとっていくのか、それとも、本人に自覚がないのであればちょっと一旦そのままにしておくのかというのは、すごく判断が難しいです」

さらに支援団体の職員は、当事者たちが、ためらわずに支援を求められるようにするためには、ヤングケアラー本人、そしてケアを受けている側の家族に対して、想像力をもった社会の眼差しが必要だと話す。

カタリバ職員
「自己責任みたいな視点を抜きにして、社会的な背景や、その家庭にどんな背景があったのかというところに、最大限の想像力を発揮して、短絡的な判断をしないという態度が、社会の側にも必要なのではないかと思います」

白岡市の15歳、中学3年生の少年のケースで、どこまで支援の手が届いていたのかは、まだわからない。ヤングケアラー経験者の女性は、いま、ヤングケラーとして暮らしている子どもたちに向けて、こんなメッセージを語ってくれた。

元ヤングケアラーの大学生
「自分の家のことってなかなか言い出せないというのが、どういう現状でもあると思う。私の場合は高校の先生に話せたけれど、自分の人生は自分のものだから、やりたいことがあるなら、何か諦めないでほしい。誰かにしゃべってみてほしいなと思います。」

(TBSテレビ 埼玉・白岡市 中3少年死亡事件取材班)