■「ざまあみろ」事件当日に被告が聞いた“声”
裁判員裁判2日目の6月24日。宮西被告は被告人質問で妄想型統合失調症によって聞こえていた“声”や犯行の動機について自ら証言しました。
「すごくつらい思いをされている。申し訳ない気持ちです」
弁護側の被告人質問の冒頭で、被害者や遺族へ謝罪の言葉を口にしました。
事件当日の早朝、実家のある函館市からバスでJR札幌駅に着いた宮西被告は、北区の自宅に歩いて帰宅。その途中で“声”が聞こえたといいます。

・弁護人「なぜ3人を刃物で刺した?」
・宮西被告「『これから嫌な思いをさせてやるからな』と“声”が聞こえた。(声が聞こえると)女性店員に変化が出たりするから、またかと思ってコンビニ見たりして。そもそも女性店員がいなかったりとか、対応してもらえなかったりとか」
自分に聞こえる“声”が周囲にも聞こえ、それによって、女性が自分を避けるという妄想にさいなまれていた宮西被告。
札幌駅から自宅に帰るまで、自分が女性に避けられていないか確かめるため、女性に道を聞いたり、コンビニの中に女性店員がいるかどうかを確認したりしながら歩いたといいます。
・弁護人「どうして女性に出てきてほしかった?」
・宮西被告「『異常』が起きていなければ、分け隔てなく対応してもらえるから。(その日は女性店員が)出てきていなかったので何かあるのかなって。“声”の介入が入ってきたのかなと思った」
現場となったコンビニに立ち寄ってカップ麺を買った際にも、女性店員が売り場にいなかったため、「異常が起きている」と感じたといいます。

・弁護人「現場のコンビニに入った時、感情の変化はあった?」
・宮西被告「どのコンビニを見ても男性店員しかいなかった。異常なことが起きているなと。(現場のコンビニを)出た時に『ざまあみろ』と“声”に言われた。もう一回行かないと(異常が起きているか)わからないなと思った」
店を出て自宅に帰った宮西被告は、“異常”を解消しようと刃物をリュックに入れ、再びコンビニを訪れます。
そして、売り場に女性店員がいなかったことで、犯行に及びました。
レジにいた男性店員(当時60)を刺した際、宮西被告は「何でやった」と連呼していたといいます。

・弁護人「『何でやった』というのは誰が何をやった?」
・宮西被告「店の人ですね。男性店員が“声”に従って、言うとおりにしたことに怒りを持ちました。“声”による嫌がらせがエスカレートしていくと、何かしようとしても上手くいかなくなる。生活保護の支給が止まって、いままでの病気の診断がだめになる」
・弁護人「なぜ3人を殺傷するまでに至った?」
・宮西被告「もう諦めたからです。人生に対して諦めた。これ以上生きて行けないと思った」
女性に避けられていると感じ、その原因が“声”の指示に周囲が従ったためだと考えた宮西被告は、「指示に従った店員に怒りを持った」といいます。
■「心神喪失」か「心神耗弱」か
弁護側は統合失調症による「心神喪失」状態で、無罪だと主張。
一方で、検察側は刑事責任能力を限定的に問える「心神耗弱」状態だったと主張しています。
・検察官「人を傷つけることにためらいはなかった?」
・宮西被告「多少はありますね。それ自体が良いことではないから。自分も人生終わるし、相手も傷つけるし、ためらいはあります」
・検察官「異常について相談する人はいなかった?」
・宮西被告「相談しづらい。“声”が聞こえると、悪さしていると言っても、信用してもらえない」