平均価格がようやく5kg3000円台となったコメ価格。国はコメの生産性向上とコストダウンのために農地の大規模化を目指しています。こうした流れの中で、小規模農家がコメを作り続ける理由や、大規模農家なりの難しさなど、日本のコメ農家が抱える課題を取材しました。
“かかりすぎる”コメ作りのコスト 赤字続きの実情
美しい棚田が広がる京都市右京区・嵯峨越畑地区を訪れた山中真アナウンサー。この地区では8軒の農家がコメ作りをしていて、その実情を伺いました。
この地域で一番若い農家・吉田宗弘さん50歳。妻と社会人の娘の3人家族です。親から農地を受け継ぎ、主に農業で生計を立てています。
(小規模コメ農家・吉田宗弘さん)
「(Qコメにとってはこの辺はいい場所?)寒暖差が非常に大きい。昼は暖かいけど夜が涼しくなる。水も山の向こうから雪どけ水がトンネルを通ってくる冷たい水なので、コメにとっては最高にいい条件」
吉田さんは約5ヘクタールの水田で小規模の稲作をしています。高冷地で育つコメは甘みが強いのが特徴です。しかし、棚田であるがゆえ、水田ひとつひとつの面積が小さく、段差もでき、一部の平地の水田で行われている大規模化や効率化とはほど遠い環境だといいます。
(吉田宗弘さん)
「コメ作りは(コスト)かかりすぎですよね。コンバイン(刈り取り機)600万しますけど、10年もつとして、1年間につかうのは50時間。田植え機を(使うのは)春だけですね。(田植え機の価格は?)250万円ぐらい」
田植えから収穫までに使う6種類の機械を揃えるだけでも約2400万円。倉庫の建設費が約1500万円かかったといいます。加えて機械を動かす燃料代やメンテナンス費も必要です。
さらに、最近の物価高もコメ作りのコストを上げる要因に。
(吉田宗弘さん)
「(肥料の値段は上がっている?)めちゃくちゃ上がっていますね。(約30年前に比べると?)約30年前に(20kg)2200円くらい。今は4300~4500円ぐらい」
吉田さんは農業を始めて28年。インターネットでコメ5kg2970円(税込み)で販売していましたが、経費をひくと赤字になる年が続いていたといいます。
(吉田宗弘さん)
「赤字ですよ。そのほかに果物や花を作っている分と、妻がフルタイムで働いているんでなんとか。(妻の収入とで?)そうです。(頭が)あがんない。僕だけの稼ぎなら子どもを大学まで出せないですよ」