育ての親の「老い」膨らむ期待と不安

江蔵さんの育ての母、チヨ子さん(92)。

認知症を患い、5年ほど前から施設で暮らしています。

江蔵智さん
「おいしい?おいしいですか?」

会話がままならないことが増え、東京都の調査が始まったことが伝わっているのかは、わかりません。

江蔵智さん
「(実の息子に)早く会いたいとは会話ができる時言ってましたけど」

育ての母 チヨ子さん(92)
「会うの?」

江蔵智さん
「もうちょっと早く調べていただきたかったのが本音ですよね。無念だったんじゃないですか」

育ての父親は10年前に他界。取り違えが分かってからの20年間は、育ての親だけでなく、生みの親の「老い」も意味します。

江蔵智さん
「父が他界し、母が認知症を患って、そういう2人を見て、血のつながりのある両親も他界しているのではないか、もう話せないのではないかという思いでいますね」

東京都は5月末、江蔵さんと同じ1958年4月に生まれた人、約200人分の『戸籍受付帳』の写しの提供を墨田区から受けたと発表。

江蔵さん自身も複数回、墨田区に開示請求してきたものですが、毎回、ほとんどが黒塗りでした。

この『戸籍受付帳』の情報があれば、調査は大きく前進することになりますが、調査の進捗について、東京都から連絡はないといいます。

江蔵智さん
「(東京都からの)良い報告を待っている。(私の願いは)当初、『会いたい』『話を聞きたい』ですけども、今は会わなくても知っている方でもいいですから、(生みの親が)どういう方だったのかということを聞きたいです」

入り交じる期待と不安。江蔵さんの願いが叶う日は、来るのでしょうか。

生みの親は?ようやく調査開始 DNA鑑定も

篠原梨菜キャスター:
取り違えがわかってから長い時間が経ちましたが、その間、江蔵さんがどんな思いでいたのかということを考えると、東京都にはきちんと調査を行って誠意ある対応をしてほしいです。

上村彩子キャスター:
20年ですからね。自分のルーツを知りたいと思うのは当然のことだと思います。

江蔵さんの弁護士によりますと、1950~1970年代にかけて少なくとも32件の取り違えがあったという民間の調査結果があるということです。

東京都の対応は同じ境遇で悩む人の希望になるかもしれないと思います。

篠原キャスター:
東京都は5月、江蔵さんと同じ1958年4月に生まれた約200人分の『戸籍受付帳』の写しを墨田区から取得しました。

今後、この中から男性に絞って戸別に訪問するなどして、江蔵さんと同じ産院で生まれたかどうかを確認し、そこからDNA鑑定を依頼するということになります。

上村キャスター:
まだまだ道のりは長いですね。江蔵さんの心情に寄り添ったスピード感のある調査を東京都に期待します。