東京都に尋ねるも…石原都知事(当時)「隠した方がいいことだってある」
江蔵さんは取り違えの事実を認めてもらい、生みの親を捜してもらおうと、東京都に尋ねましたが…。
東京都職員
「取り違えなんてありえない。でっち上げだ」
相手にすらしてもらえなかった江蔵さんは、2004年、東京都に賠償を求める裁判を起こします。
「裁判所が取り違えを認めれば、東京都が生みの親を捜すことに協力してくれる」
そう考えたからです。
裁判には、江蔵さんの育ての両親の姿も…

江蔵さんの育ての母 チヨ子さん
「取り違えられたというのがあるから悔しい。それも46年間わからなかったわけでしょ。余計悔しくてね」
この裁判で東京地裁は、病院の過失で取り違えがあったことを認めました。
2審の東京高裁も取り違えの事実を認定。
「これで、生みの親を見つけることができる」
江蔵さんの期待は膨らみましたが、当初は調査に協力的だった石原都知事は…

石原慎太郎 都知事(当時)
「相手方の人生にも関わる問題ですから、行政としてはできることに限りがありますね」
東京都は一転、取り違えられた相手のプライバシーを理由に調査への協力を拒否したのです。

石原慎太郎 都知事(当時)
「隠せたら隠した方がいいことだってあるんだ。相手がいることなの、これはね」
江蔵 智さん
「はらわた煮えくりかえったような感じでしたよね。東京都に対する不信感は募る一方でしたね」
「生みの親に会いたい」捜し続けた20年 一軒一軒、訪ね歩き…

納得できなかった江蔵さんは「自分で生みの親を捜そう」と、墨田区の20万人分の『住民基本台帳』を閲覧。
自分と生年月日が近い約80人を選び、一軒一軒、訪ね歩きました。
江蔵智さん
「自分の気持ち、真実を知りたいという気持ち、そういう名簿に頼るしかなかったので、それをもとに捜し歩いていましたね」

それでも、見つけることはできませんでした。
江蔵さんは2021年、再び裁判を起こします。今度は、東京都に生みの親を調査するよう求めたのです。
3年半にわたる審理を経た2025年4月、東京地裁は江蔵さんの訴えを認めました。
焦点は、都側が控訴するかどうかでしたが…

小池百合子 都知事
「都はこの判決を尊重いたしまして、調査を実施いたします」
小池都知事は江蔵さんに謝罪し、控訴断念を表明。
しかし、その日に行われた会見に出席した江蔵さんの表情は曇ったままです。
江蔵智さん
「この20年ずっと月日がものすごく悔しいですよ。すごく悔しいです」
江蔵さんが喜びではなく、悔しさをにじませたのには、理由がありました。