東アジアで初めて同性婚を法制化した台湾。ジェンダー平等や性的少数者の権利擁護の動きも拡大している。台湾立法院に最年少の30歳で当選し、初めて性的少数者であることを公表した与党民進党の黄捷(こう・しょう)委員(32)に話を聞いた。

頼清徳総統も支持・・・台湾で広がるLGBTフレンドリーな社会

黄捷 立法委員

Q.台湾は東アジアで初めて同性婚が実現しました。なぜだと思いますか?

黄捷委員 
複合的な要因があると思います。第一に、台湾の民主化プロセスが比較的平和的に進んだこと、市民運動が盛んだったことが重要だと思います。第二に台湾のジェンダー平等の進展には常に重要な節目となる出来事がありました。2013年に男性カップルが戸籍登記を申請して拒否されたことから、裁判に訴えたことが決定的な転機となりました。2017年、裁判所が「婚姻から同性愛者を排除することはできない」という画期的な憲法解釈を示しました。さらに台湾には同性愛を扱った文学作品が多数存在し、社会に浸透していました。

これらが同性愛を受け入れる社会的な土壌を育んだのです。既に同性婚を支持していた蔡英文総統(当時)のリーダーシップも大きな役割を果たしました。こうした要因があいまって、2019年にアジア初の同性婚の法制化が実現したのです。

Q.日本では保守派が法制化に反対しています。台湾にももちろん反対する人がいたと思いますがどうやって説得したのですか?

黄捷委員
もちろん台湾の保守派も激しく反対しました。というのも2017年に裁判所が憲法解釈を示した後、保守派は3つの住民投票を提案しました。

(1)「同性婚は民法に含められるべきではなく、民法を一夫一婦制に限定しなければならない」
(2)「ジェンダー平等教育の中で同性愛について触れてはならない」。つまり、性別の多様性に関する教育の禁止
(3)「同性婚を法制化するなら、特別法を制定すべき」

これら3つの住民投票はいずれも可決され、社会の過半数が依然として保守的な意見を持っていたことがわかります。これが当時の社会の雰囲気でした。

しかし、裁判所の憲法解釈が最上位の法的効力を持つため、私たちは最終的に裁判所の憲法解釈に基づき特別法を制定することになりました。保守派を完全に説得できたかと言えば、そうではありませんでした。彼らの意見は変わらなかったのです。

このプロセスを通じて私たちが尽力したのは、「LGBTフレンドリーな空間」を社会の中で少しずつ広げていくことでした。これもまた重要な取り組みの一つだったと考えています。

例えばLGBTフレンドリーに配慮した教材がたくさんできています。学校では、さまざまな性的指向を理解し、尊重することを教えています。頼清徳総統に至るまで歴代総統は全員、LGBTフレンドリーを支持しています。ドラァグクイーンが総統府でパフォーマンスすることを許可しています。毎年、行政院長と副総統がプライド・パレードに参加しています。