世界で初めて市街地が標的とされた化学テロ。最前線で救助にあたったのが松本広域消防局の隊員たちです。若い隊員が増える中で当時を知る幹部がその教訓を語り継ぎます。

1994年6月27日の深夜。松本市北深志の住宅街で猛毒のサリンが噴霧されました。
事件から31年が経ち当時、救助活動を担った松本広域消防局の署員の多くが定年退職し、現場を離れました。
今年4月に消防局長に就任した小島康幸さん・59歳。
事件当時は市に出向していて広報担当として対応に追われました。
若い隊員たちに事件の記憶と教訓を伝えていくことこそが使命と感じています。

松本広域消防局 小島康幸消防局長:「少なくとも松本広域消防局の中では風化させてはいけない。先輩たちから当時の話をしっかりと聞いて、それを踏まえて仕事に誇りを持って訓練を重ねていけば万が一、億が一の時に対応できると考えています」
6月18日芳川消防署。
生物、化学物質などによる災害やテロ事件に対応する特殊災害対応隊。松本サリン事件などを契機に発足しました。

薬物の専門知識を持った22人で編成され、サリンをはじめとした有毒ガスの発生を想定し、要救助者を救助する訓練などを重ねています。
消防士長 百瀬響さん:「一番苦しいのは要救助者なので、自分たちが苦しいとは言えないので万全を期して臨みたいと思います」
特殊災害対応隊の隊員は、半数以上が20代、30代で世代交代が進んでいます。
松本広域消防局全体でも31年前、事件が起きた時に在籍していた50歳以上の隊員は全体の403人中3割弱で、7割以上が事件を経験していない隊員たちです。

当時を知る小島消防局長が特殊災害に対応する隊の存在は事件の教訓を受け継ぐためにも重要と考えています。
松本広域消防局 小島康幸消防局長:「何が起きているのか分からない中で、現場に行く恐怖というのはほかの隊では経験できないし、考えられないものなので、全国に誇れるような訓練で特殊災害対応隊を維持していかなければならない。それが松本の地でサリン事件が起きたということを風化させないためのひとつだと考えています」