「シェア」が常識に? コスメは「分ける」から「共有する」時代へ

現在全国に約142店舗を展開するライフスタイルショップ「PLAZA(プラザ)」では、新発売の商品や人気の定番アイテム、オリジナル企画商品など、売り場には国内外ブランドのコスメがずらりと並ぶ。ただし、メンズに特化した売り場やコーナーはあえて設けていない。

メンズコスメ市場への本格参入は、さかのぼること2007年。同年4月に開業した新丸の内ビルディング内に、「メンズコスメ・雑貨専門店」を掲げる新業態店「QUOMIST(クオミスト)」をオープンさせた。

当時、日本国内ではメンズ美容・コスメを打ち出す業態は先鋭的だった。PLAZAを運営するスタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー商品本部の清水大三郎本部長は、同業態について「支持はされたが、マスには広がらなかった。早すぎた」と9年目での撤退について分析する。

QUOMISTでは雑貨のほか、店頭の多くをメンズコスメが占め、店内には1,000円で眉毛を整えられる眉毛サロンも併設。先々のメンズコスメ市場の動向を見越したマーケティング戦略は、近年メンズ向けの眉毛サロンの出店が増えていることを見ても、的外れではなかったと言えるだろう。

その後、同社はファミリー層などが多い郊外のショッピングセンター内のPLAZAでも、男性客をターゲットにした専用の棚を試験的に導入。ところが反応は鈍く、「メンズに特化した売り場として『切り分け』をするのはだめだと改めて分かった」(清水本部長)と、あえてメンズ売り場を設けない路線へと本格的に舵を切った。

「他社にはない編集や商品力でコスメを分かりやすく打ち出す」というPLAZAの強みを武器に、男性客がどうすれば足を運んでくれるか考えた結果、男女関係なくコスメを「シェア」するというコンセプトに行き着いたという。

従来女性用だと捉えられていたコスメを男性客が買いやすくなるほか、カップルで同じものを使うことでコミュニケーションを創出する効果もあるシェアコスメ。分け合うことでコストや無駄のカットといったメリットもある。小売店にとっては、売り場を分けないため、回遊性や購買チャンスも広がる。

「過去の教訓は生かされている」と清水本部長も話すように、各小売店でも、ひと口に「メンズコスメ」と切り分けるのではなく、その先を行くジェンダーレスな売り場が、今後広がっていくかもしれない。