無声映画の「最高傑作」

片岡一郎さんが、映画史にその名を刻む超有名作品を取り上げ解説、その後に生の音楽付きで無声映画を上映して、カツベンを披露する。「片岡一郎〈講義+実演〉活弁でたどる無声映画史」というシリーズが、福岡で始まっています。2025年の1回目が5月、福岡市美術館ミュージアムホールで開催され、映画『イントレランス』という超大作が上映されました。
『イントレランス』(監督:D・W・グリフィス)は映画史に残る大傑作です。公開は1916年。高さ45メートル、奥行きが1キロメートル弱という巨大なセットが造られました。CGのある現代では考えられないことですが、CGがなくてもこれほど巨大なセットは類を見ません。このセットは大きすぎて壊せず放置されたまま、何年も廃墟のように残ったと言われています。

イントレランスとは「不寛容」という意味です。紀元前2500年の古代バビロン王国、西暦30年頃のイエス・キリスト、中世のフランス、現代のアメリカという4つの時代を行ったり来たりする、画期的な作品でした。

時代が飛ぶときには、リリアン・ギッシュが演じる「揺りかごを揺らす女」のシーンが挟まれます。静かにゆりかごを揺らしているだけで、詳しい説明はないのですが、私は学生時代に観て、いつの時代も不寛容な出来事がたくさん起きるのを「歴史の女神」が見守っている、と感じました。