弁士と演奏 映像に合わせたライブ
映画『イントレランス』は3時間近い超大作です。講義の後で、活弁付きで上映されました。古代バビロン編は、王国が裏切りから崩壊していく大変なスペクタクル。不寛容な人たちによって青年が無実の罪に問われ、死刑判決を受けてしまう現代アメリカ編。そんな話が行ったり来たりするところを、片岡さんの活弁でお聞きください。ピアノ演奏は上屋安由美さんです。

【古代バビロン編】
山の娘の兄は、裁判官に「妹が手に負えない人間である」と訴えた。
兄「何しろ、気に入らないことがあれば叫ぶし、ひっかくし、どうにもなりません」
山の娘「なんだって?」
兄「こいつの言い分なんて、聞かなくても結構ですよ」
裁判官「よい、何かあれば申してみよ」
山の娘「触るな!どいつもこいつも、人をなんだと思っているんだ!」
裁判官「なるほど。確かにこのままにはしておけぬな」
かくして判決は下った。彼女は結婚市場に送られ、良き夫を持つこととなる。
兄「おーら、行くぞ!」

【揺りかごを揺らすリリアン・ギッシュ】
揺りかごは揺れ続ける。こなたとかなたを結びつける。喜びと悲しみを歌いながら。

【現代アメリカ編】
物語は現代に返る。ジェンキンス工場の配当金は、ミス・ジェンキンスの支援する慈善事業のさらなる要求に対応できなくなっていた。彼女は兄に不満を訴え、兄はやがて決断した。
ミス・ジェンキンス「兄さん、これでは世の中を向上させることはできません」
兄の社長「全員の給料を10%カットするんだ」
部下「はい」
労働者「なんだって?とんでもないことになるぞ」
この決定は当然ながら、労働者たちの大きな反発を生んだ。大規模なストライキが決行される。
労働者「ふざけるなジェンキンスの野郎め。俺たちからむしり取った金でもって、俺たちの人間性を向上させるとかぬかしやがる!馬鹿にするのも大概にしろ!」

怒りは激しい渦となり、時とともに勢いを増していく。工場の機能は完全に停止した。労働者たちは、いかに飢えたりとはいえ、一歩も引くつもりはなかった。
労働者「もう我慢の限界だ……ジェンキンスを引きずり出せ!」
怒りの炎は赤々と燃え上がり、街中を飲み込まんとする。これを鎮圧せんと武力が行使される。それはまさに、不寛容から生み出された一方的な暴力であった。職人たちは逃げ惑うばかり。
「さあ!構え……撃て!」
映画を上映しながら、その映像に合わせて活動弁士がしゃべり、ピアノが演奏する。1人でしゃべるので、声色を使い分けます。1つの「話芸」だと思います。