経済自由化の光と影を見つめ直す転換点

一方、加藤氏は、トランプ政権の保護主義的な政策を単に批判するだけでなく、第二次世界大戦後80年間続いてきた経済自由化の流れ自体を再考する必要性を強調した。「本当に何でも自由化がいいのか」と問いかける。

加藤秀樹(構想日本代表)

「アメリカやヨーロッパと同様、日本だって自由化によって木材や牛肉を安く買えるようになった裏で、様々なマイナスがある」と指摘。安い木材を海外から輸入する一方で、利用されなくなった日本の山林が荒れ、伐採が進んだ熱帯雨林の環境が悪化していることなども例示している。

貿易に限らず、アメリカの圧力で自由化したスーパーの立地、コンビニの24時間営業や正月営業などの"便利さ"の裏で「多くの人が安い賃金で時間に追われてストレスを抱えている」現実を挙げる。

「経済の自由化は物の豊かさや便利さをもたらした反面、分断、格差、地球環境の悪化というマイナス面も引き起こしている」と加藤氏は述べ、トランプ政権のような保護主義的な動きの背後にある真の理由を考える必要があると説く。

加藤氏は最後に「トランプ政権は歴史的必然の産物でもある。『だからトランプ流はダメだ。もう一度自由化に戻そう』ではなく、ここで経済の回し方を考え直す必要がある。地産地消という言葉もあるように、より落ち着いた、身の回りのものを大事にして過ごす道を探すべき時代を迎えている。自由化、グローバル化とその反動を潜り抜けた次の社会のビジョンを早く作らないといけない」と問いかけた。

加藤氏は「メディアでもそういう声はあまりないが、ここが一番大事なところ」と強調した。

加藤秀樹(構想日本代表)
京都大学経済学部卒業後、1973年大蔵省入省。証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などを歴任。1997年4月、非営利独立のシンクタンク「構想日本」を設立。2009年に政府の行政刷新会議の事務局長に起用され、国レベルの事業仕分けに取り組む。公益財団法人国際連合協会評議員、一般財団法人地球・人間環境フォーラム評議員などを務める。