地震予知仮説の実際と仮説へのこだわり

「熱移送説」とは、地球内部のマントルからの水平方向の「熱」の移動によって、地震および噴火が起こるという仮説です。「マグニチュード5.5以上の深発地震が1か月以内に5個以上連続して発生すると、環太平洋地域で1年以内にM7を超える地震が発生する」と言われるようなものだといいます。
そこで林教授は、2000年から2020年までの21年分の地震データを使って、この仮説を検証しました。その結果、地震の発生間隔に影響を与えることはないことが分かったとしました。特に、この仮説は、警報期間が1年間と長いことから「環太平洋地域ではM7以上の地震は1年間に平均1個以上発生するため、ある意味当たって当然のもの」と説明します。
興味深いのは、この仮説を提唱する人たちが「仮説」という言葉を多用し、こだわりを持っている点だと言います。林教授は、今では統一的な解釈になっている「プレートテクトニクス」が過去に「仮説」であった時代に「正しい理論だとするのは公正さを欠く」などと批判する声があったことに触れ、すべて「仮説」として、議論の対象として投げ込む姿勢と共通すると述べました。