ソニーグループが最新のセンサー技術と通信技術、AIを使って、地球全体を見守るプロジェクトを始めている。農業の省力化、効率化を図る「スマート農業」から自然災害への備えなど、地球を見守る「地球センシング」の最前線を取材した。

■持続可能な新しい農業を生むイメージセンサー

北海道大学の敷地内に広がる広大な農地で、新たなスマート農業の実証実験が行われている。ソニーが誇るセンサー技術を使い、小麦の微妙な変化を捉えている。イメージセンサーという通常は写真を撮ることに使われるセンサーに、AI(人工知能)処理機能が組み込まれている。

イメージセンサーはレンズから入った光を電気信号に変換する「電子の眼」で、スマートフォンやミラーレスカメラに使われている。最新のイメージセンサー「IMX500」には画像センサーだけでなく、センサー内でデータを処理するAIが搭載されている。

ソニーグループR&Dセンター 松浦賢太朗氏:
麦の先端部分の穂を画像認識しています。AIを使うことで麦の画像だけではなく、画像に映った麦の情報を抽出して伝えることができるセンサーです。

事前にAIに小麦のデータを学習させることで、穂の状態や数などのデータを集めることができる。ソニーグループと共同研究している北海道大学大学院農学研究院の野口伸教授は、無人トラクターなどスマート農業研究の第一人者で、ドラマ「下町ロケット ヤタガラス」のモデルとして知られる。野口教授は農業の省力化、効率化にはデータの活用が必要だと指摘する。

北海道大学大学院農学研究院 野口伸教授:
生育情報を遠隔でそこに行かなくても監視でき、精密な作業を行えることによって小麦の品質と量をきちんと確保できる。

野口教授が特に期待しているのは、小麦の病気の予防だ。小麦は穂が出る時期に農薬散布しないと「赤かび病」にかかってしまう。しかし、農家自体が減り、高齢化が進む今、北海道の広大な農地を見回って、穂の生育を一つひとつ確認することは困難だ。

北海道大学 野口伸教授:
AIを利用することによって的確に判断する。開花の時期、出穂の時期を検出することによって赤かび病の発生を抑えることができる非常に画期的な技術です。

農薬散布のタイミングをAIが判断し、農家の負担を軽減し、経験や勘に頼らずに誰でも始められる持続可能な農業を目指す。

北海道大学 野口伸教授:
ソニーグループのような非常に優れた技術を持っているところと組むことによって、新しい農業技術が生まれるかもしれない。農業分野をゲームチェンジする可能性があると思っています。