■ソニーグループならではの通信技術で、自然災害の予兆検知も

地球の見守りには捉えたデータを伝える通信技術も欠かせない。そこにもソニーグループならではの技術があった。ソニーグループと北海道大学が挑む小麦の生育センシング。実証実験では「小麦の穂の数」と「土壌の水分量」、「平均気温」をセンサーで計測し、この三つのデータを独自の通信システム「ELTRES(エルトレス)」を使って地上400キロ上空の国際宇宙ステーションに設置された通信機に送信、そこから農家にデータを送信する仕組みだ。

ソニーグループR&Dセンター 木村学氏:
小さいコイン電池のレベルで、麦畑に設置したセンサーから国際宇宙ステーションまで(データが)届く。エルトレスという技術は非常に省電力でありながら、長い距離を通信することができます。

人工衛星から地表を撮影するサービスはすでに普及しているが、農地でセンシングしたデータを一度衛星に送って再び地上に送るシステムは、変化を繊細に捉える必要がある農業において画期的だという。

ソニーグループR&Dセンター 松浦賢太朗氏:
農業のフィールドは非常に広大でありながら、既存の通信インフラ環境が全く整っていない場所も多いです。今回の実験では、そういう場所からでも農業にとって重要なデータをセンシングして農家に届けることを目指して研究を行っています。私たちは将来の生活や地球の環境を、テクノロジーを使って守っていきたいという思いがあります。そうすることで、農業をはじめ第1次産業、最終的には自然災害や社会問題の解決に貢献したいと考えています。

地球上のあらゆる場所をセンシングすることは、河川の氾濫や森林の火災などの自然災害の予兆を検知することや、環境の課題解決にもつながるという。

ソニーグループR&Dセンター 木村学氏
地球が声なき声で語ってきます。「暑いよ」と。あるいは、地球上にある農作物が「のどが渇いたよ」と。そういう声なき声を我々のセンシング技術で集めて、それを人が分かる言葉に変換して自らがアクションを起こしていく動きにしたい。

――日本の農業は人手不足、高齢化が深刻だ。

東短リサーチ代表取締役 チーフエコノミスト 加藤出氏:
うちの田舎の山形の農家の友人に聞いても、高齢化の問題は非常に深刻ですし、円安だとアジアから働き手も来てくれなくなる可能性もありますから、国内的にこういう技術で人手不足を補うということは非常に大事です。

ソニーグループが進めている「地球みまもりプラットフォーム」はセンサー技術、通信技術、AIを組み合わせることで災害の予兆を検知することが可能になる。たとえば、土壌の水分量を測るセンサーなどで河川の氾濫や土砂災害の予兆を検知できる。環境課題の解決、データを活用することで野菜の栽培管理ができ、生産性の向上に貢献できるとしている。

――非常に可能性が大きい分野だ。

東短リサーチ 加藤出氏:
カリフォルニアの森林火災など、毎年大騒ぎしているわけですし、世界的にこういう技術を応用できれば、日本のIT産業のひとつの起爆剤にもなりうるでしょう。

――技術はいいが、これをどう実装していくかというシステム作りで負けないようにしないと、「技術はよかったのだが」ということになりかねない。

東短リサーチ 加藤出氏:
これはSDGs関連にもつながる可能性がありますから、非常に伸ばしてもらいたいところです。

(BS-TBS『Bizスクエア』 11月5日放送より)