「バラマキ」ではなく「還元」という根拠はどこに?
高柳キャスター:
ここまでの説明で、自民党が「バラマキ」ではなく「還元」だという根拠がいくつかあるそうですね。

長田ゆり 記者:
自民党がバラマキではなく還元であるという一番の理由は、「財源を税収の上振れ分にする」と明言しているからです。赤字国債を出さない範囲での還元を行うことが一番の理由になっています。
また、住民税非課税世帯の上乗せ案について、「給付=バラマキと言っても、この物価高の中で本当に困っている人たちへの手当は必要なのではないか」というのが今の自民党の考えです。
そして、マイナンバーカードの利用が実施されれば初運用ということになるので、党内では、便利な制度を普及するための試みとしても意義があるのではないかという声もあります。
井上キャスター:
現金の給付となると、国民にお金をばらまいて票を買っているように見られるのは嫌だという思いがあり、「これは給付ではなく還元なんだ」という考え方なんだろうと思います。
それでいうと、税収の上振れ分を使うというよりも、例えば食料品にかかる消費税をゼロにするというほうが納得してもらいやすいと思うのですが。
石田健さん:
率直に言って二つあると思っていて、一つは、やはり国は会社ではないということです。
国というのは、会社のように「営業利益が出たからボーナスを配る」という考え方とは根本的に異なります。なので、税収分を社会保障やインフラ、未来に充てるという考え方が当然のように出てくるべきです。
しかし、直近の上振れした税収分を国民に還元するという国民民主の論理に乗っかっているという印象は拭えない。
もう一つは、社会保障が持続可能ではなく、多くを国庫から出しているという現状の中で、正面を切った議論をせずに「還元」という目先のマジックワードというか言葉尻だけを変えたような姿勢を打ち出しているというのはあまり誠実ではないと思ってしまいます。
出水麻衣キャスター:
一旦還元してくれるのなら、これからも上振れ分が出たら還元という選択肢が出てくるのかなと思ってしまいますが、そのあたりはどうでしょうか。
長田ゆり 記者:
ある財務省の幹部は、「今回財源にしようとしている税収が上振れる可能性はあるが、トランプ関税の影響などで、今年度の税収が下振れる可能性もある」と話していました。つまり、毎回上振れるとは言い切れない中で、本当に正しい考え方なのかというのはもう一度考えなければいけないと思います。
石田健さん:
この論理が成立して予算を大きく取ってしまえば、「今年は上振れませんでした」というような非常に恣意的な運用ができてしまうわけなので、ここはやはり気になるところです。
井上キャスター:
その前例を作ってしまいかねないということですよね。
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〈プロフィール〉
長田ゆり
TBS報道局政治部
自民党の政策を取材
柔道は黒帯
趣味は永田町のランチ開拓
石田健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説