検査時間はたったの数秒、95%の精度で感染者を“かぎ分ける”ことができる「コロナ探知犬」。いま日本でもその導入が検討されています。
■人間の1億倍の鋭い嗅覚で活躍する「コロナ探知犬」
警察官と共に犯人を確保する警察犬や、麻薬や爆発物の探知犬、また瓦礫の中から要救助者を見つけ出す災害救助犬など、人間の1億倍ともいわれる鋭い嗅覚を武器に活躍する「犬」が、いま世界で「コロナ探知犬」としても注目されています。
■コロナ探知犬のすごさ①・・・検査時間の早さ
「コロナ探知犬」が注目される理由は感染者を嗅ぎ分ける早さです。アメリカのプロバスケットボール「NBA」の試合会場では、会場に入る前の観客の手をコロナ探知犬が嗅ぎ、感染者がいればお座りをして知らせます。かぎ分ける時間は1人あたりたったの数秒なのです。
■コロナ探知犬のすごさ②・・・精度95%以上
コロナ探知犬のスゴさはスピードだけではありません。感染者かどうかを見極める精度も95%以上の高さです。中東レバノン・ベイルートにあるラフィク・ハリリ国際空港では、到着した乗客が立ち寄るカウンターの前にスピーカー状のものが取り付けられ、この中に乗客の汗をしみこませた布が入れられます。これにコロナ探知犬が鼻を差し入れて匂いを嗅ぐことで、一度にまとめて12人の検査ができ、この日はたった数秒で2人の感染者を発見しました。
レバノン「コロナ探知犬」プログラムの責任者
「優秀な犬なら精度が100%に達することも可能です。全体的にみても精度は96~98%、つまりコロナの陽性者を見逃すことがないということです」
■コロナ探知犬のすごさ③・・・無症状の感染者もわかる
さらにコロナ探知犬は、無症状の人でもかぎ分けることができるのも大きなポイント。カンボジアではスポーツイベントなどの大勢が集まる場所や、国際会議などでの活躍が期待されています。
■コロナ探知犬のすごさ③・・・検査が容易で痛みもなし
一方、フランスの介護施設ではある理由でコロナ探知犬を招きました。ここで働いているのはゴールデンレトリバーのポッカです。
介護施設に勤務する医師
「PCR検査を受ける入所者の中には、認知症が進行しているために(検査を)攻撃されていると感じる人も多いんです。鼻に綿棒を入れるのも一苦労で、職員3~4人がかりになることもあるんです」
時に痛みを伴うPCR検査とは違い、コロナ探知犬が行う検査では、脇に布をはさんでもらい、汗が吸収されるよう5分待つだけ。ポッカがその布をかぎ分けるだけなので、検査を受ける人の負担を減らすことができます。
■コロナ探知犬のすごさ⑤・・・検査費用の削減
この施設では入所者120人以上に定期的なPCR検査が必要で、これまで、1回あたり日本円にして7200円、総額で90万円ほどの費用がかかっていました。ところがコロナ探知犬ならば、ポッカが「陽性」と判断した人だけにPCR検査を行えばいいので、大幅にコストカットをすることができます。

補助犬育成団体の担当者
「PCR検査費用を節約できる。これは財政と社会保障にとって大きな利益をもたらすのです」
■コロナ探知犬のすごさ⑥・・・物に付着したウイルスも検知
「コロナ探知犬」になる犬たちは、感染者のマスクの匂いを覚え、2か月から半年ほどの訓練を受けます。探知犬のすごさは感染者かどうかをかぎ分けられることだけではありません。
アメリカ・ハワイの学校などで活躍するコブラという名の探知犬は、子供達の着けたマスクをかぎわけて学校でのクラスターを防ぐだけでなく、ウイルスのある場所も特定することができます。
Innovative Detection Concepts ブレッド・ミルズ社長
「人の感染だけでなく場所の汚染も分かるんです。学校や会社などの教室や共有スペースを嗅いでウイルスを検知することもできるので、検知した場所を清掃・消毒すればいいんです」
例えば、机やパソコンのキーボードに新型コロナのウイルスが付着しているかどうかも分かるので、どこを消毒すればいいのか判別できるといいます。
■コロナ探知犬のすごさ⑦・・・変異ウイルスにも対応
では、次々と変異するウイルスもかぎ分けることができるのでしょうか。
Innovative Detection Concepts ブレッド・ミルズ社長
「犬たちが検知してるのはコロナウイルスの匂いではなくコロナと闘う体の匂いの変化で特定しています。ですから、ウイルスがどんな風に変異しても検知することができます。コロナ探知犬はたった2秒でかぎ終えます。6分や10分など感染するほど長い間かぎ続けることはないので、コロナウイルスに感染した犬はこれまで1匹もいません」
「コロナ探知犬はみんなが正常の生活に戻れるためのさらなる防護ネットになれるということです」
■日本でも導入を検討する自治体が・・・
検査時間も短く、新たな変異ウイルスへの感染も95%以上の精度でかぎわけられる、コロナ探知犬。日本での導入実績はまだありませんが、今年9月にフィンランドでコロナ探知犬の訓練を視察した群馬県の山本一太知事が、いまその活用を検討しているということです。
(まるっと!サタデー 2022年11月5日放送より)