女性政策への不満 背景には“男性だけ”の兵役義務も
若者の投票行動では男女の分断も注目されている。それは2024年12月、戒厳令の際も際立った。

村瀬健介キャスター(2024年12月)
「たくさんの人が集まって尹大統領の退陣を求めるデモが行われています。若い女性たちの姿が特に目立ちます」
尹大統領(当時)の弾劾を求める集会は、20代、30代の女性たちであふれていた。

弾劾集会の参加者(女性)
「民主主義国家で起きてはならないこと。内乱に関わった人は処罰されるべき」
「絶対に弾劾すべきです」
そして、今回の大統領選挙では、若い男女で投票行動の違いが顕著に出た。

大統領選挙を制した李在明氏。出口調査の結果、20代女性の得票率は58.1%にのぼったが、20代男性では24%にとどまった。
李在明氏は、女性支援の政策を担ってきた「女性家族省」を拡大・再編すると明らかにしている。
李在明 大統領
「女性家族省の役割と機能を拡大・強化します」
女性家族省は2001年、金大中政権当時「女性省」として発足。公務員の3割が女性になるよう追加合格の措置を取るなど、女性の社会進出のための政策を実施してきた。

だが、2022年の大統領選挙の際、候補者だった尹前大統領は「構造的差別はなくなっている」とし、公約で女性家族省の廃止を打ち出し、選挙の争点となった。
そして、今回出馬した保守派の若手・李俊錫氏も、女性家族省の廃止を公約に掲げ、若い男性から最も支持を集めた。

李俊錫氏(40)
「女性家族省は看板を下ろし、業務の一部は保健福祉省などに移すべきです」
李俊錫氏は40代以上では支持が広がらなかったものの、20代の男性の得票率は37.2%と最も高かった。一方で、20代の女性の得票率は10.3%にとどまった。
マーケティング会社を経営するチョ・ヨンミ代表(49)。韓国では2000年に国会議員のクオータ制が導入されるなど、女性の社会進出が進んできたと話す。

マーケティング会社 チョ・ヨンミ代表
「女性が差別され、声をあげたことで国が機会均等の政策を作りキャンペーンをしてきた。政策は無いよりはあったほうがいいです」

女性政策への不満の背景には、男性だけに課された兵役の義務が大きいという。
マーケティング会社 チョ・ヨンミ代表
「男性は兵役に行ったのに、なぜその分の見返りがないのか、そういうことを男性が逆差別と考えることもあります。小さいことも含めて、こうした不満はとても多いんです」
専門家は、男女の分断が深まった理由の一つに、女性政策の意見の対立を選挙に利用するようになった政治家の影響が大きいという。

淑明女子大学 洪誠秀教授
「社会に不平等が広がり個人の地位が低下している状況では、その問題の原因が女性政策のせいだ、女性の権利が向上しているせいだと誤解されてしまうのです。女性が利益を得れば得るほど、男性の利益が減るというものではありません。政治権力がそれを利用して、男女間の対立をあおっているのです」