裁判官の「沈黙の15秒」
法廷では、思いがけない場面があった。
裁判官が主文を言い渡し、淡々と判決理由を読み終えた。本来であれば「説諭」あるいは閉廷を宣言するタイミングだ。しかし、裁判官は何も言わず、法廷は静寂に包まれた。
通訳人や被害者代理人は、何が起きているのかわからず、不思議そうに裁判官の方を見た。
裁判官は机の上で組んだ手をじっと見つめていた。
沈黙は15秒ほど続き、やっと言葉を発した。
「判決の内容は以上の通りです。これで閉廷するので傍聴人は退席してください」。
この15秒間、裁判官は何を思っていたのだろうか。