ハード面が整備された一方で…、「危機感が薄れている住民が増えた」

(記者)「伊佐市の山野川です。川幅を広げるなどの工事を行い現在は復旧しています」

鹿児島県はおよそ8億円をかけ改修工事を進めてきました。ハード面が整備された一方で「時間の経過とともに危機感が薄れている住民が増えた」と下小薗さんは感じています。

(ブドウ園経営 下小薗一郎さん)「河川や橋の改修工事が終わったので、安心感を得て、自分で対策を練ることを考えていない住民が多い」

大雨に対する備えについて伊佐市民に聞いてみると…

(伊佐市民)「川幅が広がって、大丈夫だろう。今のところは安心している」

先月21日、伊佐市では午後6時20分までに1時間に56ミリの非常に激しい雨が降りました。土砂災害警戒情報が発表され、伊佐市は警戒レベル4の「避難指示」を発表。山野地区にも避難所が開設されましたが、逃げた住民は1人もいませんでした。

「避難指示」などの伝達はこれまで市の職員が自治会長に電話で連絡し自治会長が各世帯に連絡していましたが、市は今年4月までにおよそ7億円かけて市内全域に防災無線や防災ラジオを設置。

避難を呼びかける時間は大幅に短縮されましたが、市の担当者は「暗くて移動するのが危険な時をのぞいて、必要な時は迷わず安全な場所に逃げてほしい」と呼びかけます。

(伊佐市総務課 嶽本圭係長)「ハード面的な整備や、ソフト的な支援は当然できるが、行政としてやれることは限界が必ずある。皆さんに自分の命を守ってもらうのが最優先として考えてもらい、まずは逃げること避難することが大事」

5年前に氾濫した山野川を含め、県はこれまでの5年間でおよそ360億円をかけ河川改修工事に取り組みました。県の担当者もハード面の整備とともに「自分の命は自分で守る”自助の意識”をもってもらうことが課題」と感じています。

(県河川課 福永和久課長)「川はあふれないというものではなく、あふれるおそれがあるという認識のもとで、自分たちの避難する場所がどこであるかを早いうちに確認して避難行動につなげてほしい」

これから本格的な雨の時期を迎えます。気象情報をこまめに確認し危険な時は迷わず避難するなど意識を変えることが、自分や大切な人の命を守ることにつながるかもしれません。