ガソリン車を電気自動車にする“コンバートEV”が広がりを見せています。往年の名車を後生に残す1つの選択肢。既にルパン三世の愛車や懐かしの国産車が電気自動車として蘇っています。新しいEVのカタチに迫ります。
■「排気ガスを出さない」「走行音が静か」コンバートEVの魅力
11月3日に、ラスベガスで開催されていた自動車のイベント。古い車が並んでいますが、実はこれ、すべてEV。アメリカではいま、ガソリン車をEV化する「コンバートEV」が浸透しつつあるのです。
世界中から関係者が視察に訪れる中には、日本人の姿も。日本でコンバートEVを作る数少ない1人、古川治さんです。

オズモーターズ 古川治さん
「すごく驚いている。日本とのスケール感が違うと感じる」
実際に古川さんが作ったコンバートEVを、日本で見せてもらうことに。
1977年に作られたフォルクスワーゲンの名車「ビートル」です。

古川さん
「排気ガスを出さないのでマフラーがない。エンジンがなくてモーターが入っている」
走行距離は1度の充電で250キロほど。さっそく乗せてもらうことに…
山本恵里伽キャスター
「中を見てみると、古い昔に作られたものだとわかる。これはどうやって動かす?」
古川さん
「音も何もないと思うが、もう動く。切り替えスイッチをドライブにすると動く」
走り出しが静かなのはEVの特徴。
古川さん
「アクセルとブレーキだけで運転できる」
この車、もともとはマニュアル車。それがEVになったことでオートマ限定免許でも運転することができるようになりました。走行音もとても静かで、シートがきしむ音も聞こえます。
山本キャスター
「シートのきしむ音がこんなにするの初めてです!」
■EV化への思い きっかけは幼い頃の排ガスの記憶
もともと自動車のメンテナンスなどをしていた古川さん。EVに拘るのは幼い頃に抱いた排ガスへのイメージからでした。
古川さん
「私が小さい頃は排ガスの臭さをすごく感じていた記憶がある。街を走っていると歩行者が必ずいるが、そこで臭いを感じさせないことはすごくいいことだなと」
実際にどう作るのか。製作現場を特別に見せてくれました。
作業場にはEVに改造され完成間近の「ポルシェ」や、まさにEV化が進められているイギリスの名車「ローバー・ミニ」が。

古川さんが見せてくれたのは元々車に載っていたエンジンとEV化した車に載っているモーター。
山本キャスター
「(モーターはエンジンに比べて)こんなに小さいんですか!?」
古川さん
「これで時速100キロ以上で走る」
モーターはエンジンに比べ構造がシンプルで、故障などのトラブルも少ないといいます。バッテリーは後ろのトランクに。
■コンバートEVに込めた思い 世代を超えて名車を引き継ぐ
古川さんがこれまで手がけたコンバートEVは80台以上。そのうちの一台が半世紀前に作られた「スバル360」。愛称は“テントウ虫”です。

横浜市で電気関係の会社を営む斉藤さんが、長く乗りつづけるため、5年前、古川さんにEV化してもらっていました。
斉藤さん
「自動車というより家電感覚。買い物など日常の生活には十分使える」
6時間の充電で走行距離は100キロ。5年の間、まだ不具合はありません。

斉藤さん
「古いものを大切にしつつエコでもあり、おじいちゃんが乗っていた車をお父さんが乗って、また子どもが乗るというような、かたちはどうあれ引き継いでいけることになる」