「町のコメ屋のことを全然わかっていない」

中小のスーパーや米穀店を対象とした備蓄米(2021年産)の申し込みに関する農水省のオンライン説明会が5月29日に行われました。しかし、中小のスーパーが備蓄米を買うには「年間1000t以上」のコメの取り扱い実績が必要だということがわかると、現場では落胆の声が聞かれました。専門家によりますと、この条件を満たすのは10店舗前後を持つチェーン店に限られるということです。
精米能力を持つ米穀店については、取り扱い実績の制限はありませんが、国から引き渡される量が「最低10t~」となっています。この条件について、西川米穀物店・西川信一社長は「町の米屋のことを全然わかっていない。最低ロットが10tっていうのがまず無理、小さなお米屋さんには無理かな」とコメント。10tものコメを積み下ろしして保管場所を確保する労力やコストが全く考えられていないといいます。さらに、『8月末までの3か月で売り切らなければいけない』という条件もネックに。西川社長は「相当な量を売るお米屋さんじゃないと、ちょっとしんどいかなと思う」と話します。
また、中小のスーパーや米穀店に回ってくるのが古古古米だという点について西川社長は「古古米は大手企業さんにいって、米屋にはそれよりさらに1年落ちのコメが回ってくるっていうのは、米屋の立場としては残り物を回されているみたいな感じもしますし、それを(味も分からず)そのまま(お客さんに)売るのは、ちょっと抵抗がある」と疑問を感じているようです。
一方、備蓄米の安さには飲食店も注目しています。大阪府堺市にある「千ベロ家 ザビエル」の自慢は、ご飯おかわり無料の500円のランチ定食。以前は日本産の米を使っていましたが、価格高騰でカリフォルニア米に切り替え、ワンコインを守っていると言います。ただ、コメの価格高騰がかなりの痛手になっていて、2000円台や1800円台の備蓄米に期待を寄せています。備蓄米の味について、この店の谷英人さんは「少し心配はありますが、食べてみて、満足していただけるとなれば、“古古古米ランチ”でも始めたいと思っている」とコメント。手に入れるのはなかなか厳しいようですが、「ネットで販売していると聞いたので、探して購入しようと頑張っている」と話し、購入できればすぐに提供したいそうです。
備蓄米契約に手を挙げなかったスーパーもあります。「申し込み条件である『年間1000t以上の取扱実績』に達していない」という店のほか、「普段、卸売業者からコメを仕入れているため、直接備蓄米を申し込む予定はない」という店も。将来を考えたとき、“お付き合い”を大切にするという意見も聞かれました。一方でコンビニ各社、ファミリーマート・セブン‐イレブン・ローソンは中小向けの枠組みで契約を申し込んだということです。














