復帰のシーズンとなった2022-2023年シーズン、チームはリーグ最下位に沈み、さらに入れ替え戦にも敗れ、V1からV2への降格が決まった。開幕から13連敗、シーズン途中に監督が解任となるなど、チームは“どん底”の状態だった。

◆松本愛希穂さん
「V2降格が決まった入れ替え戦の試合、あの悔しさは、けがをした時の悔しさよりも大きかったですね」

悔しさをバネに、再起を誓った翌2023-2024年シーズン。新監督を迎え、チームの立て直しを図る中で、松本さんは“キャプテン”に抜擢された。

◆松本愛希穂さん
「V2へ降格した時、まず、すごい“責任感”みたいなものがのしかかってきて…。本当に、覚悟を持って『このチームで昇格しよう』という思いで、キャプテンを引き受けました」

当時のチームメイトで、松本さんと同じく現役を引退した井上愛里沙さんは、当時の様子をこう振り返る。

◆井上愛里沙さん
「V2に降格したタイミングでキャプテンを引き受けるというのは、すごく勇気のいる決断だと思います。苦しいこともたくさんあったと思うんですけど、自分より年下ながらそういう部分を見せずにチームを引っ張っていってくれて、私たちも救われていました」

V2に降格し迎えた2023-2024シーズン。松本さんは、小柄な体格ながらディフェンスの“要”として何度もチームのピンチを救い、さらにキャプテンとして“どん底”だったチームを懸命にまとめ上げた。そしてチームはこのシーズン、「V2全勝優勝」という快挙を成し遂げた。

◆松本愛希穂さん
「私自身、キャプテンで何かできたかっていうと、あんまりそんなに風には思えていなくて…。このシーズンはチームメイトに支えられて・助けられて、V2全勝優勝を成し遂げることができました」

そのシーズン終了後の2024年4月、ヴィクトリーナ姫路は、現在のトップリーグ「SVリーグ」への参戦が決定。シーズン中の12月に行われた「天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権」では、初優勝を果たして日本一に輝き、クラブ創設以来初めて国内主要タイトルを獲得した。

国内トップリーグに返り咲き、初の主要タイトル獲得、そしてチームメイトが日本代表に選出…。チームは大きな輝きを放っていたが、その功労者でもある松本さんの中には、ある“思い”が芽生え始めていた。