800m日本記録保持者の落合晃は世界陸上につながる大会にできる
アジア選手権が重要になるのは、世界陸上出場資格を得るためのRoad to Tokyo2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)のためのポイント獲得において、順位ポイントが高く設定されているからだ。
記録が良ければ記録ポイントと順位ポイントの合計得点が高くなるが、中・長距離種目は過去の結果を見ても、アジア選手権は高い確率で勝敗優先のレースになる。Roadto Tokyo 2025の順位を上げるためには、1つでも上の順位を取りたい。またアジア選手権優勝者は、その種目のアジア地区のRoad to Tokyo 2025上位選手がいないなどの条件が付帯するが、エリア選手権優勝者枠で出場資格を得る可能性もゼロではない。
10000mはRoad to Tokyo 2025の出場資格圏内(1240点)にいる葛西潤(24、旭化成)が出場を辞退。4月の日本選手権優勝の鈴木芽吹(23、トヨタ自動車)が1232点で、出場資格圏内まで8点と迫っている。だがガルヴィール・シン(26、インド)が、現在、鈴木より2点上の1234点を持っている。シンは今年3月に27分00秒22と日本記録(27分09秒80)を上回るタイムを出した選手だが、鈴木も日本選手権レース後に26分台の手応えがあると話していた。26分台が望めるペースは期待できないが、鈴木にとって絶対に負けられない相手だ。
5000mでは森凪也(25、Honda)が金栗記念優勝、GGP3000m日本人トップと今季は強さを見せている。アジア選手権の結果でRoad to Tokyo 2025の出場資格獲得圏内に入って来るのではないか。佐藤圭汰(21、駒大4年)は現在Road to Tokyo 2025の40位に付けている。世界陸上出場枠42人ということを考えると、アジア選手権で絶対にポイントを上げておきたい。5000mでも今年2月に12分59秒77と、すでに標準記録を突破しているシンが強敵になる。
スローペースになることが多いアジア選手権の中・長距離種目だが、男子800mが唯一、05年と19年に、1分44秒70の標準記録より速い優勝タイムが出ている。昨年日本記録の1分44秒80を高校生ながらマークした落合晃(18、駒大1年)にとってはチャンスだ。昨シーズンのアジアリストで2位、今年5月の静岡国際優勝時の1分45秒16はアジアリスト3位。Road to Tokyo 2025でも現在43位と、56人の出場枠内に入っている。2位以下でも標準記録突破のチャンスがあるし、スローペースでもしっかり上位に食い込めば東京2025世界陸上への道は開ける。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)