豊田兼には為末大の日本記録更新の可能性
鵜澤は5月3日の静岡国際の予選で、20秒13と世界陸上標準記録(20秒16)を突破。世界陸上出場資格を得たので、7月の日本選手権の成績で代表が決まる。

静岡国際の決勝は追い風2.1mで惜しくも参考記録となったが(追い風2.0mまでが公認記録)、20秒05と、末續慎吾が03年に出した日本記録の20秒03に迫った。5月10日の世界リレー選手権4×100 mリレー予選では、3走で9秒19の区間タイム1位。バトンパスのつたない国の選手は区間タイムも遅くなるのだが、鵜澤は4組行われた予選全体でも3走の最高タイムだった。昨年までの後半型から、今季は前半からスピードを上げる走り方に変えている。静岡国際では「120mくらいから脚が回らなかった」という。鵜澤自身は「そんなんじゃダメです。戦えない」と辛口の自己評価をしたが、課題の残る中での20秒05は日本人初の19秒台への期待を高めた。この種目でも今季20秒14と、公認記録で鵜澤と0.01秒差のタイムを出したアタフィが強敵となりそうだ。
男子110mハードル日本記録(13秒04)保持者の村竹ラシッド(23、JAL)は、GGPで日本人初の12秒台を目指していた。4月26日のダイヤモンドリーグ厦門大会で13秒14と世界陸上標準記録(13秒27)を大きく破った。パリ五輪入賞者(村竹は5位)は今年に入っての標準記録突破の選考基準を満たし、世界陸上代表に内定した。

5月3日のダイヤモンドリーグ上海紹興大会でも13秒10、GGPでは向かい風(1.1m)もあって13秒16だったが、20年以降アジアで13秒20未満を出したのは村竹と、今大会は欠場する泉谷駿介(25、住友電工)の2人しかいない。村竹優勝の確率は高い。
再度の12秒台への挑戦を期待したいが、ダイヤモンドリーグ2試合とGGPに向けて、かなり集中していた。「一度落ち着いて今までのレースも分析し直して、アジア選手権の優勝は絶対の目標にして、技術的なところも(やりたい内容を)達成できるように頑張りたいなと思います」12秒台への挑戦は、技術的な仕上がり次第となりそうだ。
また男子400mハードルには豊田兼(22、トヨタ自動車)と井之上駿太(22、富士通)が出場する。井之上は昨年9月に48秒46と、世界陸上標準記録の48秒50を突破済みだが、豊田が47秒99を出したのは昨年6月の日本選手権で標準記録の適用期間に入っていなかった。

豊田は静岡国際に48秒62で優勝、GGPは48秒55で日本人トップの2位。標準記録突破は時間の問題だ。特にGGPでは5台目まで、47秒99の時より0.15秒以上速い入りを試している。19年ドーハ世界陸上銅メダルのアブデルラーマン・サンバ(29、カタール)に勝負を挑み、結果的に記録も48秒50の標準記録だけでなく、為末大が01年に出した47秒89の日本記録更新の可能性もある。
*5月26日の午後、日本陸上競技連盟より、豊田のアジア選手権出場辞退が発表された。理由は「トレーニング中に腰背部に違和感が生じたため」としている。