「復興絡みの失言は即アウト」命取りとなる失言とは?
今村氏の辞任から2年後の2019年4月10日、再び二階派所属の桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣(当時)が自民党議員でのパーティーでの挨拶で、議員を持ち上げるつもりで「復興以上に大事なのが同僚議員だ」と発言した。また東日本大震災の復興に関連する失言だった。

今村氏の失言の時と同様、安倍政権の対応は迅速だった。午後6時過ぎの発言だったが、午後8時過ぎには菅官房長官(当時)が桜田大臣を呼び出し、発言の内容を確認、更迭の判断をしている。こちらも発言して2時間後に辞任となった。当時、官邸幹部は「復興がらみの失言は即アウトだ。安倍内閣は全大臣が復興大臣ということで最優先にしてやってるんだから」と更迭理由を明かしている。
当時はその他にも理由があった。
危機意識の背景には、この年の夏の参院選挙の影響を考えたからだった。というのも第1次安倍政権は閣僚の相次ぐ辞任に見舞われ参院選で大敗し退陣、辞任の連鎖は食い止めなければいけないという焦りがあった。
“超異例”官房長官が会見で1分半沈黙 石破内閣の危機管理は?
夏の参議院選挙が近いという状況は19年と同じだが、石破総理は今回の江藤大臣の更迭に3日かかっている。上記の安倍内閣の2人の失言では、更迭までわずか2時間ということと比較すれば、失言に対する内閣の危機管理能力や意識が大きく違う。
安倍総理は菅官房長官、杉田官房副長官、今井総理秘書官など危機管理に重厚な布陣を敷いたが、いまの石破内閣の危機管理能力がわかる象徴的な出来事があった。

安倍政権であれば、閣僚がどこかで失言すればただちに官邸に報告があがり、その日のうちに辞任させるかどうか判断しただろう。
ところが今回、18日に江藤氏の発言があったにもかかわらず、翌19日の官房長官会見でそのことを記者に問われ、およそ1分半沈黙した。記者の質問が想定されていなかったため、答弁できず秘書官からのメモを待っていたのだ。長い沈黙の末、書かれたメモを読み上げた。
「お尋ねの報道は承知しておりますが、江藤大臣の発言の詳細について承知をしていないため、政府としてコメントすることは、差し控えたいと思います」
つまり報道は承知をしていたにもかかわらず、詳細を把握せず、何も対応もしていなかったということだった。その日の午後、釈明に追われた江藤大臣は、その時点で総理や官房長官から注意もなかったと明かしている。事態の深刻さが官邸内で周知されず、結果、対応が後手に回った。石破総理は今国会でも高額療養費制度の見直しでも対応が二転三転し、判断の遅れを批判された。今回の失言への対応の遅れというのは、すべての行政への対応の遅れに繋がりかねない問題ではないかと思う。