「マオリの聖地トンガリロ」

マオリのルーツはニュージーランドから遠く離れた南太平洋の島々にあります。800年前、カヌーで北島にたどり着いたと言われています。北島で暮らし始めたマオリは何度も噴火に遭いました。時には集落が火山灰に埋もれてしまう大噴火にもあいマオリは火山に畏怖の念を抱き信仰するようになったといいます。

その聖地を失いかねない危機もありました。19世紀半ばニュージーランドがイギリスの植民地になるとイギリス人は森を次々と切り拓き牧場にしていったのです。その手が聖地トンガリロに迫った時でした。ある首長が立ち上がりこんな決断をしたのです。彼は聖地を守るためにイギリス女王のもとで保護されることを条件にトンガリロの土地を国に献上しました。そして1894年、トンガリロはニュージーランド初の国立公園となり聖地の自然は守られることになったのです。

1993年、トンガリロ国立公園は文化的価値も認められ複合遺産となりました。マオリのリーダーが聖地に歌を捧げる姿を撮影した時、全くマオリ語が分からない撮影スタッフの心にもその歌声が刺さってきました。トンガリロにはマオリの祖先の魂が宿っているのだと感じた瞬間でした。