千円札を握りしめた子ども時代の写真
ギャンブル依存症は本人だけでなく、家族も深く傷つける。息子のギャンブル依存症と10年以上向き合ってきた母親の佐藤さん(大分県在住)は、会場で1枚の写真を紹介した。

佐藤さん:
「この写真は約25年ほど前、遊園地で撮った私のお気に入りのものです。ただ、気になるのは、幼い息子が握りしめているものです。なんだか分かりますか?千円札です。お金に執着し、苦労する将来を表しているような残念な写真でもあります」
息子は小学校ではサッカー、高校からはラグビーと、スポーツに打ち込む少年だった。その一方で、友だちをからかって喧嘩になったり、ゲーム機を借りてそれをなくしてしまったりとトラブルも多かったという。高校生のときには県の相談支援センターや病院を訪れたが、原因は分からないままだった。
専門学校卒業後の2009年、息子は希望していた東京の会社に入社するも、すぐに辞めてアルバイト生活に。女性との借金問題も起こり、その後も金銭トラブルが絶えなかった。

佐藤さん:
「夫の父、夫、私が借金の肩代わりや生活費の補てんをし、息子に説教したり、諭したりしてきました。『借金をしていないだろうか』『払うところにはちゃんと払っているだろうか』『一体いつまで世話を焼かせるのか』と私の心は不安のままでした。頭からずっと息子とお金の問題が離れませんでした」
しかし問題は深刻化し、ついに去年9月、息子は窃盗容疑で逮捕された。
佐藤さん:
「息子は判決後、施設に入り、回復へのスタートを切りました。また家族の会にも相談し、お金の問題は本人に責任を取らせることが大事と言わました。息子の回復につながる解決策も具体的に提案してくれて、私たち親子は救われました」
「私は息子から『苦しいからどうかして』という言葉を最後まで聞けませんでした。息子は『自分の意思で何とかするから大丈夫』と言ったことがあります。でも本当は苦しいと言いたいこともあったかもしれません。言えない親子関係だったのだと思います」