困難を極める事故原因の究明

自衛隊研究のスペシャリストでもある中京大学の佐道明広教授は、今回の事故原因について究明は非常に困難であるとの見通しを示しています。多くのT-4練習機に搭載されているフライトレコーダーやボイスレコーダーが、当該機には搭載されていなかったこと、そして機体が大きく破損しているとみられるからです。事故原因が解明されないとどうなるのでしょうか。これまでのケースでは、事故機と同機種の機体が使用停止となることがあります。このため、約200機あるT-4練習機が運用停止となる可能性も考えられます。

しかし、T-4練習機の運用停止は、自衛隊全体の運用に大きな影響を与えかねないと、佐道教授は強い懸念を示しています。パイロットの養成が遅れ、多様な任務に対応できる汎用性の高い機体が使用できなくなることは、自衛隊全体の運用に制約が生じることになるからです。

つまり、事故原因の究明が遅れ、運用停止が長期化すればするほど、日本の安全保障にとっての影響は拡大することを意味しています。そこで、自衛隊にとって一つの妥協点として考えられるのは、「T-4練習機という機種全体に問題があったのではなく、あくまで墜落した当該機に固有の原因があったのではないか」という結論を導き出すことだと、佐道教授は述べています。

近年、相次ぐ自衛隊の航空機事故。原因が明らかにならなければ、隊員の不安は解消されません。同時に基地周辺の住民だけでなく、国民の不安も消えることはありません。震災や台風などの自然災害において国民の信頼を得ている自衛隊だからこそ、事故に関する情報を積極的に開示し、国民と共有することが重要です。国民の不安は疑念を生み、最終的には不信感へと繋がりかねません。

CBCテレビ 解説委員 大石邦彦