目撃証言から検証する墜落の状況
事故当日は晴天で視界も良好であり、風もほとんどなかったため、天候が事故に影響した可能性は低いと考えられます。そうなると、機体または人的なトラブルの可能性が高まります。離陸直前の検査では機体に異常はなかったとのことですが、離陸直後に不測の事態が発生しました。低空飛行中であったことを考慮すると、バードストライクの可能性も否定はできません。ちなみに、パイロットの2名は、航空自衛隊の幹部クラスである1等空尉(飛行時間約1170時間)と2等空尉(飛行時間約480時間)でした。
かつての自衛隊トップで元統合幕僚長の河野克俊氏を取材し、目撃証言から検証してみました。まず、1つ目の目撃証言は、「機体を方向転換させて池に落としたように見えた」というものです。これについて河野氏は「事故を起こさないことが大前提だが」と前置きした上で、「過去にも有事の際は市街地を避けて墜落させたこともあった」と語りました。確かに、住宅地などに墜落すれば、一般市民を巻き込む大惨事となるため、市街地を避けて墜落させる指導もあったということです。
実際、1999年には、埼玉県内の基地を離陸した自衛隊機が狭山市の住宅地を避け、民家から離れた入間川河川敷に墜落する事故が発生しています。この事故では、乗員2名は住宅地への墜落を回避するため、最後まで機体を制御しようと試み、脱出が遅れたため殉職されました。
