選挙応援をきっかけに、地方の政治家と結びついていく旧統一教会の実態を追います。舞台は富山。県議や市議、さらに知事まで教団側の選挙応援を受けていました。富山の放送局チューリップテレビが取材しました。
■元信者「もちろん強制」新田県知事への選挙応援
2016年、富山県に住む70代の女性は240万円の壺2つを相次いで購入した。
元信者の女性
「体には無数の悪霊がついていて、それをこの壷に入れて、天の父母様にお願いして霊を救っていただくのです」

入信は2014年。教団から“悪霊”の恐怖を繰り返し植え付けられたというが、2か月前の8月に旧統一教会を脱会した。
安倍元総理銃撃事件後、教団内部はどのような状況なのか。
元信者の女性
「全然変わりなくという感じ。2か月前まで普通に日曜礼拝でもたくさん来ておられるし。やめる人おるんかな」
女性はたびたび献金や物品の購入を求められ、計1500万円以上を使ったという。その間、女性は選挙への支援も求められていた。
元信者の女性
「教会長がみんなに言って。もちろん強制です」
2020年の富山県知事選でも選挙の応援に駆り出された。保守王国とも言われる富山県。当時、5選を目指す現職の石井隆一知事に対し、保守系の新人・新田八朗氏が出馬の意向を表明した。

結局、自民党富山県連は石井知事の推薦を決定。保守分裂の選挙となった。新田氏が不利と言われるなか、近づいたのが旧統一教会だった。
■教団側が伝授した“選挙のテクニック”とは 教団関連団体幹部が取材に応じた
教団の元広報局長で、富山県出身の教団関連団体幹部・鴨野守氏。彼が新田氏に近い人物を通じて、支援を申し出たという。
告示2か月前(2020年8月)、新田氏は旧統一教会・徳野英治会長(当時)、関連団体の名古屋支部長と相次いで面談。選挙応援が始まった。

元信者の女性は別の選挙の際に作った名簿を見せてくれた。新田知事の選挙でも25人分の名簿を提出するよう求められたという。
元信者の女性
「年賀状をみて親戚とか友人とかの名前を書いて提出しました」
次に指示されたのが、いわゆる告示後の電話作戦。集められた場所は教会だった。
元信者の女性
「2階に部屋があるんです。携帯を借りてきて『この携帯で電話してください』と。50人、60人に電話をかける。2時間ほど。名簿がいっぱいあるから」
電話口でこう名乗るよう言われたという。

元信者の女性
「新田八朗の選挙事務所ですけど、今度の県知事選挙には、ぜひとも新田八朗を当選させてくださいと。統一教会とか、家庭連合とかは言わなくて新田八朗の選挙事務所から電話しています」
ーー言うなと言われた?
「はい、そうです。言ったらダメだって」
信者たちは3、4人が2時間交代で電話をかけ続けたという。
新田陣営は選挙プランナーを使い、県政の若返りを訴え追い上げた。当時の選挙応援について、教団関連団体幹部の鴨野守氏が2022年8月、取材に応じた。
鴨野守氏
「選挙の協力はさせていただいた。名簿集めとか電話かけ」
知名度で劣る新田氏の陣営に、あるテクニックも伝授したという。
対面した相手に強い印象を持ってもらうため、新田氏の顔写真、名前と電話番号を入れた首から提げるカードを作成し後援会事務所の全員に配ったのだという。
新田氏は知事選を制した。当選を祝う会場にいた鴨野氏はこう語った。
鴨野守 氏
「瞬殺。NHKの大河ドラマのタイトルが出る午後8時にパーンと『新田候補当選確実』。あれ瞬殺っていうんです。感無量でした」