5月18日に東京・国立競技場で開催されるゴールデングランプリ(以下GGP)の注目日本人選手の1人に、男子110mハードルの村竹ラシッド(23、JAL)が挙げられる。パリ五輪ではこの種目で日本人初の決勝に進出し、5位に入賞した。国際試合に強いのが特徴で、GGPでは日本人初の12秒台も狙っている。村竹も「東京2025世界陸上と同じ舞台ですし、一発12秒台を出して9月の世界陸上に弾みをつけたい。国立を沸かせたい」と意気込んでいる。
今季2レースに成長の跡
村竹は今季すでにダイヤモンドリーグ2戦に出場して連続2位。4月26日の厦門大会では13秒14、5月3日の上海紹興大会は13秒10だった。村竹は23年の日本インカレで13秒04の日本タイを出したが、海外では昨年9月にクロアチアで走った13秒14が最高記録。パリ五輪では13秒21だった。
2戦連続で海外自己タイ&自己新を続けられた要因として、国内で得意としていた中盤で出る展開を、国際レースでも「徐々にできるようになった」こと、そして「冬期にやってきたことの成果」を出せたことを挙げる。
冬期は例年と同様に「基礎体力とスプリントトレーニング、ウェイトトレーニング」をしっかり行った。それに加えて「柔軟性を高めること」にも重点的に取り組んだ。
「昨年まで(リード脚の)右脚が接地してから、(抜き脚の)左脚の動きがもたついていました。それが解消されてスムーズになりつつあります。可動域が狭いことが良くないと考えて、家で柔軟性を高めるストレッチを色々やりました」
柔軟性がない中で抜き脚を地面に降ろそうとすると、降ろすポイントが限られる。可動域が広ければ、自分の降ろしたいと思うポイントに脚を降ろすことができ、次の動きにスムーズにつなげられる。
村竹を大学時代から指導している順天堂大学の山崎一彦監督は、「ハードリング動作にしなやかな動きで入っていくところは群を抜いている」と太鼓判を押す。それに加えて着地の際の動きも良くなれば、世界トップ選手たちと互角に戦うことができる。
課題は1台目を越えたあとの動き
ダイヤモンドリーグ2試合で村竹自身が感じた課題は、「1台目を越えた後のもたつき」だという。1、2台のハードル間のタイムは厦門大会が1秒07で、上海紹興大会は1秒08だった。上海紹興大会のハードル間タイムは以下の通り。
1-2台間 1秒08
2-3台間 1秒01
3-4台間 0秒99
4-5台間 1秒00
5-6台間 1秒01
6-7台間 1秒01
7-8台間 1秒03
8-9台間 1秒04
9-10台間 1秒04
終盤は徐々に減速するが、それでも2台目の方が遅い。他の選手と比べた場合でも、村竹の2台目は上位5選手の中で一番遅い。特に中国のダイヤモンドリーグで2連勝したコーデル・ティンチ(24、米国)との差は明らかだった。1台目は村竹がトップで通過したが、2台目で並ばれ、3台目以降は差を広げられ続けた。
「パワーがついたのでスタートが良くなりましたが、1台目を越えた後の歩幅が大きくなって、上手く刻むことができませんでした。1台目を越えた後の動きを修正できれば、中盤も自ずと良くなります」
ティンチは上海紹興大会で12秒87と自己記録を更新。今季世界最高で、世界歴代でも4位タイというハイレベルの記録だった。GGPにはメダリストも12秒台選手も出場しない。どういうレース展開が、村竹にとってベストの展開になるのだろうか。