民設民営で“地域創生”の狙い

現地を取材した播摩キャスターが「一番感動した」と話すのは、基本的に【全部自前】でやっているところだ。

――ホテルの運営を大手チェーンに委託したり、ショッピングセンターもあれだけの規模になれば大手不動産デベロッパーに頼むのが普通。なぜ通販事業者のジャパネットが自分でやるのか。

『ジャパネットホールディングス』髙田旭人社長兼CEO:

「父の代から大事にしていることだが、基本的に自前でやるか外部にお願いするかの基準は【開業直後の精度ではなく、1年後2年後3年後にどっちの方が品質が高いか】という思考。ホテルは外部に頼んだ方が最初は楽だが、3年後どっちの方が磨かれていいホテルになっているかを考えたら、間違いなく自分たちで思いがある人がやった方がいいだろうと。迷わず自前という判断をした」

――民設民営のビジネス。1000億円の回収は大変だ。

髙田社長兼CEO:

「我々通販で2024年は2700億円くらいの売上高。おそらくスタジアムシティ単体だと年間売上は100億円位で全体の4%という世界。それでも自分たちの施設を使いながら収益をアイデアでのせていくので、何とか30年以内で回収できるのではないか」

また、【民設民営】にしたからこそのメリットもあると話す髙田社長。
例えば座席数や屋根の有無にしても社内会議で全部決められるため、“合理的”“スピード感”をもって判断できるという。

――ジャパネット全体の中で、この地域創生事業の位置付けは?

髙田社長兼CEO:

「一応ビジネスとしてやっている感覚はあって、全て奉仕的な感じでやっているつもりもない。一方で収益を上げるだけだったら他のことをやるので、バランスを取りながら感動とビジネスを両方実現することにチャレンジしている。これが成功すると日本中に広がって、日本中の地域が自然と民間企業の力で強くなっていく。“いいことをやりながらちゃんと利益が出たらいいな”という感覚のビジネス」

1000億円かけた挑戦には課題も

取材を終えた播摩キャスターは、“地域創生”というとどこか肩に力が入って『頑張らなければ』という印象がある一方で「髙田社長からは、ビジネスと両立させていこうと“自然体の感じ”を受けたのが非常に印象的だった」と話す。

また、期待と同時に課題を指摘する声も。

『東短リサーチ』社長 加藤出さん:
「税金を使わず“民間の知恵”で地域活性化をしていく成功例にぜひなって欲しい。どうしても日本の財政の限界があるから、民間の力でいかにやっていくかという大変重要な局面。ただオープン当初は客も一杯入るが、いかにリピーターを増やすかが課題だと思う」

(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年5月3日放送より)