交渉カード「大豆・トウモロコシ」:日本のダメージ「小」米国の納得度「中」か

2つ目の交渉カードとして考えられる「大豆・トウモロコシ」の輸入枠拡大、そのパワーはどうでしょうか。木内登英氏によると、このカードを切った場合の日本のダメージは少ないと分析されています。

木内氏は、日本国内で大豆やトウモロコシを生産している農家は少なく、日本はすでにアメリカやブラジルから多くの大豆を輸入しており、ブラジルからの輸入分をアメリカ産に切り替えるといった対応も考えられるとします。ただし、食料安全保障の観点からは、特定国への依存度を高めることへの懸念や、国内で生産する農家への影響は考慮する必要があるでしょう。

また、アメリカ側の納得度は「中」程度と木内氏は見ています。日本が輸入を拡大すれば、アメリカの農家にとっては朗報となります。特に、共和党の支持基盤でもある南部の州には農家が多く、政治的なアピールに繋がる可能性があります。納得度が「中」にとどまる理由は、貿易赤字削減への効果が限定的です。

仮に日本がアメリカからの農産物輸入を3倍に増やしたとしても、対米貿易黒字の削減額は1.1兆円程度にしかならないと試算されています。アメリカが8兆円以上の貿易赤字解消を求めていることを考えると、このカードだけでは不十分と判断される可能性があります。