交渉カード「コメ」:日本のダメージ「大」米国の納得度「小」か

日本が持つカードとして挙げられるのが「米」です。アメリカはかねてから、日本に対して非関税枠の中で主食用米、つまり人が食べるアメリカ米の輸入枠を増やすよう求めてきました。『平成のコメ騒動』の時代と比較すると近年は品種改良が進み、海外産のコメにも口に合うものが増えているとも言われています。

しかし、この「米」を交渉カードとして切ることの効果について、専門家は厳しい見方を示しました。野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏は、日本がアメリカの要求を受け入れた場合、日本のダメージは大きい、特に大きいのは「政治的ダメージ」と指摘します。与党の支持基盤である日本の農家を刺激することになり、間近に控える参院選への影響が懸念されるためです。

一方で木内氏によれば、「価格の安いコメ」が増えることは、現在の短期的な視点に過ぎないといいます。一度拡大した輸入枠を後から縮小するのは困難であり、長期的な影響を考えると安易な判断はリスクが高いと分析しています。

さらに、日本が輸入枠拡大を受け入れたとしても、「アメリカ側の納得度は小さい」と木内氏は見ています。アメリカにとって、日本の米市場開放は「日本の市場は閉鎖的だ」という象徴的な意味合いが強いものの、輸入枠を増やしたところでアメリカが抱える巨額の対日貿易赤字が劇的に改善するわけではなく、アメリカ側の満足感は低いだろうと予測しています。

このように、「米」の輸入拡大は、日本にとっては政治的な打撃が大きく、アメリカにとっては実利が少ないという、扱いの難しいカードと言えそうです。