日本人初の19秒台と世界陸上決勝進出の期待
昨年までの鵜澤の自己記録は20秒23で、日本歴代10位だった。日本記録は末續慎吾(当時ミズノ)が03年に出した20秒03(追い風0.6m)。末續は、その年に行われたパリ世界陸上で銅メダル獲得の快挙を達成した。
日本歴代2位はサニブラウン・アブデル・ハキーム(26、東レ)が19年にマークした20秒08(追い風0.8m)で、サニブラウンは17年のロンドン世界陸上で7位に入賞した。五輪4大会連続出場の飯塚翔太(33、ミズノ)が20秒11(追い風1.8m)で続き、今回の鵜澤の20秒13は日本歴代4位タイである。
110mハードル元日本記録保持者の谷川監督は、現役時代はミズノ所属で末續の先輩だった。「近いのは間違いなく末續選手ですね。内旋する感じの体の使い方などですが、鵜澤は末續選手みたいに(膨大な量の)練習をしないので、もう少し練習ができるようになったらもっと速くなります」
鵜澤自身も、冬期練習を経て目標を高く設定し直した。「以前は日本記録を超えるのが目標と言っていましたが、訂正したいと思います。日本記録を通過点にできるくらいにしたい。今年一番の目標は世界陸上の決勝で走ることです」19秒台を出して東京2025世界陸上に臨めば、決勝に進出する可能性は大きい。そのとき初めて、自身の走りや取り組みを肯定的に振り返る言葉を、鵜澤から聞くことができるだろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)