国連が定めたSDGs=持続可能な開発目標では、「陸の豊かさを守ろう」として、森林の保全や回復を訴えています。日本の「公害」の原点ともいえる場所での、森の再生の取り組みを取材しました。
森の再生は…旧足尾銅山の“公害”

緑に覆われた山々。その中で異様な存在感を放つ、一面、黒く塗られたような斜面があります。表面を覆うのは、銅の製錬過程で発生した廃棄物です。
栃木県・旧足尾銅山の製錬所にほど近い場所で、明治から昭和にかけて、製錬所から放出された有毒な煙の影響で、木々が枯れ、現在、山肌は岩と砂に覆われています。

稜線に沿って登っていくと、姿をあらわしたのは一本のブナの木。もともとブナの林が広がっていたとみられますが、次々と枯れ、唯一生き残ったこの木は「孤高のブナ」と呼ばれるようになりました。
このブナが立つ稜線の左側には森が広がっていますが、煙害を受けた右側は、木がないため、雨で土壌が流され、岩と砂だけになってしまいました。

「孤高のブナ」を見た人
「(人間は)なんてことしてしまったんだって感じ。岩だけですもんね」
「実際に来てみると、環境破壊のすごさみたいなものを実感できる」
資源の採掘がもたらした傷跡。それに抗うかのように立つ1本のブナ。ここ足尾は、森と私たち人間の関係を今、改めて問いかけています。