「本気で安くする気がない」と見えてしまうワケ
専門家の中には、今回の備蓄米放出のしくみだけを見ると、「そもそも本気で安くする気がない人たちがいるんじゃないか」と思ってしまうのだといいます。
それは、・ほぼ“JAだけ”に売却した点、・買い戻し制という2点です。特に山下研究主幹は、この点を強調しています。
今回の入札では、大手集荷業者のみが参加できる仕組みとなっており、結果的に9割以上をJAが落札しました。
山下研究主幹は「本当に消費者の元に安く行き渡らせたいのであれば、今回の入札を、卸売業者や大手小売などに直接放出するというやり方だってあったはず」と指摘。結果的に落札量の9割がJAに集まったことをみて、備蓄米21万tは(追跡されるので)卸売りに出るとは思いますが、制度上、備蓄米以外でそもそもJAが持っている在庫を「出す・出さない」を決定できてしまうとしました。
元厚生労働省キャリア官僚で行政学者である神戸学院大学・中野雅至教授は、「JAをかばうわけではないが、そんな露骨なことは…」と疑問を呈しました。
もう1点、備蓄米放出には「買い戻し制度」が設けられています。これは、放出したコメを来年の新米収穫時に買い戻すという制度です。
山下研究主幹曰く、この制度についても「経済学では説明ができない変な仕組み」だと話します。仮に次の新米で集荷量が増えたとしても、買い戻しで市場からなくなることがわかっているため、値段は高止まりしそうだと指摘します。