刺繍教室に様々なきっかけで集まり、思い思いに過ごす参加者たち

刺繍教室の参加者の中には、去年から1年間近く続けて参加している人たちもいます。

アニメ「ゴールデンカムイ」にはまった、とか、元々北海道が大好き、とか始めた理由は様々です。アイヌ文化のことだけでなく、自分の近況、自分が暮らす街の話題など、刺繍をしながらおしゃべりもはずんでいました。

参加者の声
「アイヌの刺繍を習える場所を探してたら、SNSで@北千住って書いてあったんです。北千住だったら通えるということで来てみたら、UtaEさんがとにかくフレンドリーに接してくださって続けています」

参加者の声
「あまり手芸は得意じゃないんですが、ひろ子先生から、自分らしく刺繍すればいい、と教わっていて、そういうところが好きです」

参加者の声
「心の憩いの場ですし、刺繍してるとすごくリラックスできます。癒しの場ですね」

刺繍教室を取材した時期、大塚ではアイヌ刺繍作品展が開かれていて、Ratcinokarさん、藤戸ひろ子さん、そして刺繍教室の参加者のグループEatarkaの作品が1か月に渡り、交互に展示されていました。

刺繍作品展の会場

春になり、5月頃からは、北海道での活動も多くなります。

ただ、北海道・十勝のハポネタイ(母なる森)は、活動休止中に豪雨災害で道路や橋が壊れ、活動に使う建物も被害を受け、発信拠点として十分な活動ができない状況にあります。

そこで現在は、建物の修繕や、生態系に合わせた森の回復に取り組んでいます。2025年は「森の回復を考えるワークショップ」などが行われる予定で、東京の刺繍教室の参加者の中からも「行ってみたい」と声があがっていました。

アイヌの「個人史」を残すプロジェクト

また、UtaEさんが、ハポネタイの活動の中で最も重要にしているのは、今を生きるアイヌの個人の歴史を映像に残す「個人史」プロジェクトです。

一人一人のアイヌとして生きた歴史「個人史」を残し、北海道のハポネタイに個人史館を作りたいと母親と始めたものです。聞き取りが終わった個人史は、映像作品としてまとめられ、東京でも上映会が開かれたりしていますが、まだまだ道半ばです。

ハポネタイ代表のUtaEさん。人形はRatcinokar作の衣装を着たUtaEさんと母親

ハポネタイ代表のUtaEさん
「音楽、料理、手仕事、アイヌ語等々、何か遊びながら、何か楽しみながら、関われるところの先に、これを残してくれてた人たちって誰だろうってなると、やっぱり私達の先輩、大先輩、そして先祖がいるわけです。そういった方たちの声を聞いてほしいんです。『個人史』プロジェクトは一番大事な活動です」

4月29日には、ハポネタイ(母なる森)の再建に向け、「アイヌ文化の息吹を感じる一日」というイベントが東京・巣鴨で開かれます。アイヌの楽器、トンコリの体験。アニメ「ゴールデンカムイ」のムックリパート担当であるUtaEさんとアイヌ語監修の中川裕さんのトークも実施します。

黒曜石で石器を作って魚をさばく体験に、様々なアイヌ料理等々が予定されています。この他にも2025年は様々なイベント、教室が東京と北海道で予定されています。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:崎山敏也)