「ハポネタイ」(アイヌ語で「母なる森」)というプロジェクト

日本の先住民族アイヌの文化を、東京と北海道で発信している「ハポネタイ」というプロジェクトがあります。

「ハポネタイ」とはアイヌ語で「母なる森」という意味。発信拠点の一つ、北海道・十勝の清水町にある「ハポネタイ」と名付けられた森です。

取材した日は大塚でアイヌ刺繍作品展も開かれていた

ハポネタイは東京各所で、様々な教室やイベントを開催しています。ほぼ月に1回開かれている、藤戸ひろ子さんによるアイヌ刺繍教室もその一つです。

3月中旬に大塚駅近くで開かれた教室では、藤戸さんが初参加者を前に、アイヌの刺繍についてアイヌ語も交えながら刺繍の紋様の持つ意味や背景などを含め、やり方を丁寧に説明していました。

最初は皆さん、難しそうな表情でしたが、手を動かしだして少し経つと、「めっちゃ楽しいです」という言葉が飛び出してきました。

参加者からは「元々、手でなんか作るのが好きで、アイヌ刺繍の教室があるというのを聞いて、これはやってみたいと思い、来た」という感想もありました。

もう一人の初参加者は「ひろ子先生の道具とか物に対する思いがすごく伝わって来るし、とっても優しいという感じがします」と語ります。

初参加者は先生の手元をスマホで撮りながら

自分が自分であることを喜び、表現していく場を作りたい

ハポネタイの活動が始まったのは2006年です。十勝出身で関東に暮らす惠原るみ子さんが清水町に土地を購入し「ハポネタイ」と名付けました。「先祖の思いを受け継ぎながら、未来に向けて、アイヌであることを喜び、表現していく場を作りたい」という思いからです。

ただ、るみ子さんの病気や資金難もあり、7年ほどでいったん活動は休止になりました。それを娘のUtaEさんが引き継ぎ、2020年に活動を再開しました。

ハポネタイ代表のUtaEさん
「母が始めた活動を一緒にやっていく中で、アイヌである自分を受け入れるようになりました。この活動がきっかけで、私自身がアイヌであることをオープンにすることができたので、母の強い思いから立ち上がったものを残したかったんです。あとは、この文化の楽しさ、そしてハポネタイに関わる人が、私が私であることを喜ぶことにつながればいいなって思い、引き継ぎました」

刺繍教室の参加者は思い思いに時間を過ごす