鈴木芽吹(23、トヨタ自動車)と葛西潤(24、旭化成)に、東京2025世界陸上代表入りの可能性が出てきた。日本選手権10000mは4月12日、熊本県のえがお健康スタジアムで、9月に国立競技場で開催される東京2025世界陸上と、5月に韓国クミで行われるアジア選手権の選考競技会を兼ねて行われた。男子は鈴木が27分28秒82で優勝し、アジア選手権代表入りを確実にした。前回優勝の葛西が27分33秒52で2位。Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では葛西が、昨年から続いて日本人トップに立っている。

レース展開に現れた現時点の2人の力

鈴木がマークしていたのは葛西と太田智樹(27、トヨタ自動車)だった。葛西は前回の日本選手権優勝者でパリ五輪代表。太田は前回2位でやはりパリ五輪代表で、記録的にも10000mで日本歴代2位、ハーフマラソンでは今年2月に日本記録(59分27秒)を出したばかりだった。

しかし太田は状態が良くなく、5800m付近からリードを奪った吉居大和(23、トヨタ自動車)を追ったのは、鈴木と葛西の2人だった。2人は吉居の背後に付かず、数メートルの距離を置いて走っていた。

「葛西さんを徹底的にマークして走っていました。大和に一定の距離を置いていましたが、作戦でそうしているのか、キツいからそうなっているのかわからなくて、行くに行けませんでした」

鈴木はレース後にこう話していた。

一方の葛西は「まったく余裕がなかった」と、そのときの状況を明かした。「芽吹も大和も後輩なので、自分が前に出たい気持ちはあったんですけど、頼りっぱなしのレースになってしまいました」

7000mから3人は集団に近い形で走り続けた。レースが動いたのは残り1000m。鈴木がスパートをかけリードを奪っていった。