日本を足がかりに「ドル安誘導」?

また、関税をめぐる各国の通商交渉を担当するベッセント氏は「日本が列の先頭にいる」(9日)と話したが、細川さんは「ただのリップサービスにすぎない」という。
トランプ政権には「関税の引き上げ」とともに“もう一つ大事なミッション”があり、それは【ドル安への誘導】。その先導役・牽引役がベッセント氏だからだ。

細川さん:
「日本は今でも円安が行き過ぎているという議論もある。これから利上げの議論もある。そういう中で“ドル安政策に誘導していく相手”として日本を第1号としてやって、他の国にドル安誘導を仕掛けていく」

関税+ドル安は「アメリカ経済に大打撃」

そして、トランプ氏の言動は市場を毎日振り回している。

▼ニューヨーク株式市場の【ダウ平均株価】は乱高下
⇒5日の相互関税「一律10%」の発動後、株価下落
⇒9日、「上乗せ分」の一時停止を受け急反発。上げ幅は2962ドルと過去最大
⇒10日、中国への関税率が145%になると伝わると、米中貿易戦争への警戒感から
1000ドル以上値下がり

【為替市場】では「米中対立の激化でアメリカの景気が後退するのでは」という警戒感から、ドルを売って円を買う動きが拡大
⇒一時1ドル=142円台後半と約半年ぶりの円高水準に

▼安全資産とされるアメリカ国債も売られ【長期金利】が急騰
⇒長期金利の代表的な指標である10年債の利回りは、前週末の3.9%から一時4.5%を超える水準に

こうした金融市場の反応は「ホワイトハウスにとって想定外だったのでは」と話すのは、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド『ホリコ・キャピタル・マネジメント』の堀古英司さんだ。

堀古さん:
「株がある程度下がるのは覚悟していたと思うが、債券の利回りがあれだけ上がるとか、ドル安になるとかは思っていなかったのでは。関税を導入して金利が上がるという直接のリンクはほとんどないはずなので、単なる“パニック売り”。とにかく現金にできるものは現金にしようという動きが起こってしまうのは想定外だったと思う」

ーー全ての資産が売られる状況で、しかもアメリカ売り。これが原因でベッセント氏がトランプ氏を説得したと。

堀古さん:
「まず市場が冷静になる期間が必要という判断だと思う。それから、<ドルが下がった>のは大きな誤算。なぜかというと、関税を導入しても相手の国の通貨が安くなってくれれば相殺されて、アメリカの消費者は損をしない。同じ価格で買えるので。ただ今回は関税を導入し相手国通貨が上がってしまったので、値上がり分をアメリカの消費者が全部負担しないといけないことになる。これはアメリカ経済に大打撃」