“名もなき家事”が他人事にならないためにできること

火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』より多部未華子

生活するうえで必要な細々とした“名もなき家事”。小説では深掘りすることができなかったというが、ドラマではその“名もなき家事”についても描かれる。朱野氏は「“名もなき家事”は作業そのものの大変さよりも、家庭から、地域から、あるいは社会から、引き受けている労働をないものにされてしまうことへの絶望が大きいんですよね」と自身の考えを教えてくれた。

近年、働き方やライフスタイルは多様化している。「以前は共通のライフスタイルがあり、共感しあえることが多かったですが、多様化によってそれがなくなってきた。孤独に心が蝕まれやすい時代だと思います。自ら選んだ人生だったとしても、これで良かったのかと揺れてしまって、スタンスを保つのが難しくなっているのではないでしょうか」と朱野氏は語る。

詩穂だけでなく、働くママ・長野礼子(江口のりこ)や、二年間の育休を取得したエリート官僚・中谷達也(ディーン・フジオカ)も、追い詰められるシーンも描かれている。そんな彼らが同じ悩みを持つ人と話すことで、問題解決のためのエネルギーを得ていく姿に背中を押される人も少なくないだろう。「みんなそんなにうまくいってないんだと分かることで、つらい家事も乗り越えられると思うんです。家事従事者は家族の感情ケアをすることになりがちですが、それも”名もなき家事”ですよね。押しやられた自分の感情を復活させるために、誰かと話すことが大事だと思います」と、“話す”ことの重要性を提案する。

火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』より江口のりこ