尽きない“家事”の悩みは朱野氏にも

“名もなき家事”をはじめ、家事の悩みは尽きない。朱野氏も例外ではなく、特に苦手なのは整理収納だという。
「フリーランスには育休もないので、落ち着いて整理収納する時間を作ることが難しかった」と語る朱野氏は、現在、整理収納アドバイザーの力を借りて片付けに取り組んでいる。そのきっかけは、子どもの写真を見返した時。「子どもはかわいいのに、背景に散らかった服や書類が写っていて悲しくなったからです。片付いていない家ではものをなくしやすいので、家事負担も大きくなりがちです」と打ち明ける。
朱野氏は撮影現場を訪れた時、礼子の家を見て共感したという。「詩穂の家は整理収納がきちんとしていたのですが、礼子の家を見たら、自分の家なのではないかと錯覚しました(笑)」。

人生には迷いがつきものだ。たとえ道に迷っても、共感し合える誰かがいれば、また歩き出せる。家事も仕事も育児も介護も、全ては社会の中でつながっているはずなのに、個人の問題として片付けられてしまうことが多い。 『対岸の家事』が共感を呼んだことについて、「作品に登場する人物たちのように、うまくいかない家事について誰とも話せてない人が多いからではないでしょうか」と朱野氏が語るように、この物語は、家庭や職場、社会の中で孤立しがちな人の悩みに光を当てる。誰かの苦しみを“対岸”の出来事で済ませないように、私たちはどう向き合うべきなのか。