廣中璃梨佳(24、JP日本郵政グループ)が東京2025世界陸上代表入りに一歩近づいた。日本選手権10000mは4月12日、熊本県のえがお健康スタジアムで、9月に国立競技場で開催される東京2025世界陸上と、5月に韓国クミで行われるアジア選手権の選考競技会を兼ねて行われた。女子は廣中が31分13秒78で優勝し、アジア選手権代表入りを確実にした。昨年はケガの影響でパリ五輪を断念したが、昨年11月のクイーンズ駅伝(3区区間2位)以降は順調に回復。東京2025世界陸上代表有力候補に躍り出た。
「ラスト2周までまったく息が上がらなかった」
廣中が狙い通りの展開で勝ちきった。それが1000m毎の、通過&スプリットタイム表に表れている。
下記の表は左から距離、廣中の通過(スプリット)、Wavelightの通過設定(スプリット)。
1000m 3.08.2(3.08.2) 3.08.(3.08.)
2000m 6.14.2(3.06.0) 6.16.(3.08.)
3000m 9.22.5(3.08.3) 9.24.(3.08.)
4000m 12.30.5(3.08.0) 12.32.(3.08.)
5000m 15.38.8(3.08.3) 15.40.(3.08.)
6000m 18.48.3(3.09.5) 18.50.(3.10.)
7000m 21.58.8(3.10.5) 22.00.(3.10.)
8000m 25.08.0(3.09.2) 25.10.(3.10.)
9000m 28.16.8(3.08.8) 28.16.(3.06.)
10000m 31.13.78(2.57.0) 31.20.(3.04.)
※廣中のタイムは日本郵政グループ提供
今大会はトラックの縁石に沿ってWavelightが設置され、主催者の決めたペースでライトの点滅が選手を先導した。ペースメーカーの選手が設定タイムを守りやすくなるため、ペースが上下動することがない。
前半で1〜2秒Wavelightより先を走ったのは、1000〜2000mが設定より2秒速くなったためだ。しかし7000〜8000mで1秒速くなっているのは、「廣中の調子が良かった証拠」だと日本郵政グループの髙橋昌彦監督は指摘する。調子が良い時は同じペースで走っているつもりでも、微妙にスピードが上がり、前の選手の脚に接触したりする。「それが嫌で前の選手の右横に出るんです」。ペースメーカーを煽る形になって、ペースが上がることがある。
廣中自身も「ラスト2周までまったく息が上がらず、余裕を持って行けていました。スタミナとスピード持久力がついたことがわかりました」と、自身の状態の良さを感じていた。
8000mでペースメーカーのマーガレット・アキドル(コモディイイダ)が外れると、廣中が先頭に立った。だが「行ききれない」と判断すると、8400m(残り4周)で、ただ1人廣中に食い下がっていた矢田みくに(25、エディオン)に先頭を譲った。
レースが動いたのは9200m(残り2周)過ぎ。廣中がスパートし、矢田を引き離した。「いったん後ろに下がって様子を見ながら、自分を落ち着かせる時間を持ちました。ラストスパートをどこかからかけるか、レースプランをもう1回練り直す時間にしたかったんです」
廣中が8400mで下がるシーンを見た高橋尚子さんは、「優勝を確信した」と翌朝のテレビ番組でコメントした。廣中の余力や自信が現れたシーンだった。

















