プロ経営者に聞く 経営判断としてボーナスを控えめに設定することはありえる?
井上キャスター:
人災とも言われていますが、トランプ氏がどう考えるのかで状況が大きく変わります。
トランプ氏はビジネスマンなので、株価が下がると焦るのではないかと言われていましたが、それも焦らなかった。ですが今度、債券市場が大きく変動すると焦った。意外に弱点もあることを知った感じはありますが、いかがでしょうか。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
日本の消費者の心理と、企業も実は似たような心理を持っています。先が見えない・不透明なものを、企業は一番嫌がります。
今の状況では、計画の立てようがないので保守的になってしまいます。「とりあえず様子を見よう」「とりあえず資金を貯めよう」「ボーナスに反映する」といった対応も、企業や業界によってはあるかもしれません。
自動車産業は、アメリカの輸出だけでも年間6兆円ぐらいで、日本の自動車関連全体では、550万人ぐらいが雇用されているわけです。そのため今の状況がこのまま続けば、影響がないとは言い切れません。
今後、日本政府もアメリカ政府と交渉するようですが、それがどこまで折り合いがつくのか。少しでも先が見込まれるのであれば、企業も安心ですが、今はそのような状況ではないですね。
出水麻衣キャスター:
企業も不安になると、ボーナスの価格などを抑えめに設定するというのは、経営判断として十分にありえるということでしょうか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
やはり最悪の場合を考えるので、もっと状況が悪くなっても大丈夫なように、今はこのくらいに抑えておこうという企業は出てくるかもしれません。

出水キャスター:
「とりあえず」が、一体いつまで続くのかというところですよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
そうですね。大統領の任期は4年なので、この先4年ぐらいは見ておかないといけないというのが最悪のパターンですよね。
井上キャスター:
任期が4年だとして、その4年で「生産拠点をアメリカに持っていこう」という企業判断は、経営者としてできるものなのでしょうか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
ものにもよりますが、工場を持って行くだけでも、ものすごい時間と労力とお金がかかります。4年後に違う大統領になって、撤廃するとなれば、何のために工場を移したんだという話にもなりかねません。これだけ不透明になると、一旦様子を見ようというのが今の全世界の企業の考え方です。
井上キャスター:
そうすると経済もどちらかというと縮小し、景気も縮小していきますよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
もちろん積極的に投資している企業も中にはありますが、一般的にはやめておこうというのが一番だと思います。トランプ氏は、アメリカに雇用が入って、投資を増やすための政策としてやっているので、狙っていないことだとは思うのですが、今の状況はどうなのかなと思います。
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<プロフィール>
高見知可 TBS報道局経済部
日銀・流通・農水省など担当
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など