全国シェアはたった“3.8%” 愛媛県民が麦みそを愛するワケ
では改めて、なぜ愛媛は麦みその生産が盛んに行われるようになったのか。営業部長の田中大介さんに伺った。
営業部長・田中大介さん
「各エリアでたくさん穫れる穀物でみそを作っていたのが始まり。愛媛県の場合は麦が非常に穫れる地域だったので、昔から各家庭で農家が麦を使ったみそを作っていた」
飛鳥時代に中国から日本に伝わったとされる「みそ」。古くは貴族や武士しか口にすることができない高級品だったが、室町時代になると庶民の間でもみそづくりが本格化。
そんな中、愛媛でみそづくりの原料に選ばれたのが愛媛特産の大麦の一種「はだか麦」だった。愛媛は米を年2回作ることが難しかったため、米の裏作で麦を作っていたためだ。
瀬戸内海沿岸の地域は温暖で雨が少なく麦の栽培に適しており、現在でも愛媛ははだか麦の生産量が38年連続で全国一位を誇っている。
全国のみそ生産量のうち、約8割を占めるのが米こうじを使った「米みそ」。対して「麦みそ」の生産量はたった3.8%にとどまる。全国的に見ればマイナーな麦味噌だが、愛媛では事情が異なっていたようだ。

営業部長・田中大介さん
「愛媛では大豆があまり穫れなかったので、麦をたくさん入れるみそを作らざるを得なかった」
現在、県内に20以上あるみそメーカーのほぼ全てが麦みそを作っていて、市場を席巻している。数百年にわたり愛媛に根付いてきた「麦みそ」の味が、県民の食の好みを決定付けたと考えられる。
垣原教授は、インタビューの中でこうも話していた。
垣原登志子教授
「学生にアンケートを取ると、次世代に残したいもので一番に挙がるのは『みそ汁』。昔から、親の代から続いてきたものというのはなかなか消えていかない。それが食文化の良いところ」
和食文化の象徴ともいえる「みそ汁」。愛媛では地理的、歴史的背景から麦みそづくりが盛んに行われるようになり、みそ汁の味付けが甘くなっていったことが全ての始まりだったのではないだろうか。

親から子へ、子から孫へ。脈々と受け継がれていくみそ汁の味こそが、地域ごとに根付いた「郷土料理」の味に現れているのかもしれない。